top of page

激減する公立幼稚園の存在意義とは?

  • 執筆者の写真: 吉田正幸
    吉田正幸
  • 7月4日
  • 読了時間: 3分

地域の幼児教育の質の維持・向上への影響を調査


 文部科学省はこのほど、公立幼稚園の減少に伴う地域の幼児教育の質の維持・向上の取組への影響について調査研究を実施すると発表しました。全国の地方自治体を対象にアンケート調査を実施するとともに、それを基に10か所程度の自治体にヒアリング調査を行い、今年度内に報告書をとりまとめる予定にしています。

 公立幼稚園は、ピークであった1985年に6269園もあったものが、2024年には2534園と6割にまで減少し、2005年の5546園と比べても半数以下に減っています。少子化の進行が大きな要因であることは確かですが、それに加えて女性就業率の上昇に伴う保育所志向の高まりや、幼児教育・保育の無償化による私立幼稚園との保育料負担格差の解消など、多くの面で公立幼稚園としてのアドバンテージがほとんどなくなったことも大きな要因だと考えられます。

 その一方で、公立幼稚園は地域の幼児教育を担う中核的な施設として、これまで「幼稚園教育要領を着実に実践し、その専門的知見やノウハウを他の幼児教育施設に提供するなど、地域の幼児教育の質向上において重要な役割を果たしてきた」(「今後の幼児教育の教育課程、指導、評価等の在り方に関する有識者検討会最終報告」令和6年10月)という側面もあります。

 そこで、文科省では、公立幼稚園の減少に伴う地域の幼児教育の質の維持・向上の取り組みに対する影響について調査研究を実施することにしたものです。

 なお、上述の有識者検討会最終報告は、公立幼稚園の果たす役割として、①幼児教育の拠点園として、地域の子供の実態に基づく実践研究を実施するとともに、地域に幼稚園教育要領の趣旨やこれに基づく実践を浸透させる役割、②小学校以降との円滑な接続を図るため、架け橋期のカリキュラムの編成・実施・改善を主導する役割、 ③障害のある幼児や外国籍等の幼児を含む全ての幼児に質の高い幼児教育の機会を保障する役割、④域内の他の幼児教育施設や地方自治体との人事交流を通じて地域の幼児教育を担う人材輩出する役割、⑤幼児教育の重要性や幼児期の発達の特性を踏まえた日々の教育活動について地域に発信する役割、などが重要であると指摘しています。

 また、最終報告は、公立幼稚園を所管する地方自治体に対して、「域内において公立幼稚園が果たすべき役割を明確化するとともに、その役割を果たせるよう、地域の実情や保護者のニーズ等を踏まえつつ、公立幼稚園における3年保育や預かり保育の実施、認定こども園への移行などについて検討することが必要である」と説いています。

 今回の調査研究が、地域における公立幼稚園の積極的な存在意義を打ち出すことができるのかどうか。あるいは、従来の役割に加えて預かり保育の実施や認定こども園への移行など、どこまで多機能化しながら存続することができるのかどうか。いろいろな意味で、公立幼稚園の存亡を占う一つのきっかけになりそうです。

bottom of page