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執筆者の写真吉田正幸

無償化で保護者の教育費負担は軽減されたが…

 

物価上昇もあって徐々に負担が増える傾向に


 文部科学省がこのほど、令和5年度子供の学習費調査の結果を公表したところ、令和元年10月から実施された幼児教育・保育の無償化により、公立幼稚園、私立幼稚園いずれも保護者の教育費負担が大幅に下がったものの、その後の物価上昇もあってか負担が増加する傾向に転じたことが分かりました。

 この調査は、入園料や保育料、制服、通園費、学用品などに要する「学校教育費」、「学校給食」費、習い事やけいこごとなどに使う「学校外活動費」の3項目について、2年に1回調べているもので、今回は令和5年度1年間に支出した経費の実態を調査したものです。

 それによると、幼稚園に係る子供の学習費は、総額で公立幼稚園が前回(令和3年度)調査より約2万円増えて18.5万円、私立が3.8万円増えて34.7万円でした。それぞれの内訳は、公立が学校教育費6.9万円、給食費1.5万円、学校外活動費10.0万円、私立が学校教育費15.4万円、給食費3.6万円、学校外活動費15.8万円となっています。公私立いずれも3つの項目すべてにおいて前回調査より支出が増えています。

 一方、無償化以前の平成30年度調査では、公立が総額22.4万円(学校教育費12.1万円、給食費1.9万円、学校外活動費8.4万円)、私立が総額52.8万円(学校教育費33.1万円、給食費3.1万円、学校外活動費16.6万円)となっていました。これと比べると、令和3年度は公立が総額で5.9万円(このうち学校教育費が6.0万円)、私立が21.9万円(同19.6万円)も支出が減っていて、明らかに無償化の影響がうかがえます。

 ただ、無償化前の平成30年度と無償化後の令和3年度を比較してみると、公立幼稚園は元々保育料が安かったため、学校教育費は12.1万円が6.1万円へとほぼ半額になったものの、減少額は6.0万円でした。これに対して私立の学校教育費は、33.1万円が13.5万円へと20万円近く減っています。それでも公立に比べて2倍以上の支出になっていますが、これは無償化された基本保育料とは別に入園料や上乗せ徴収があるためだと考えられます。

 とはいえ、令和3年度と令和5年度を比較すると、学校教育費も給食費も学校外活動費もすべて支出が増えており、これは近年の諸物価高騰の影響を受けたものと考えられます。無償化前の平成30年度の支出総額を100とした場合、令和3年度は公立が74、私立が59、令和5年度は公立が83、私立が66となっており、無償化による保護者負担の軽減効果が徐々に薄らいできていると言えそうです。

 ちなみに、幼稚園から高校まで15年間の学習費総額に関して、すべて公立だった場合は約596万円、すべて私立だった場合は約1976万円と、実に3倍以上の開きがあることも分かりました。

 なお、この調査は、2年に1回行われているものですが、本来は令和2年度に行う予定であった調査が令和3年度に行われたため、今回の調査は令和5年度(令和5年4月1日~令和6年3月31日の1年間の費用調査)となっています。




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