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執筆者の写真吉田正幸

“誰でも通園”できる受け入れ体制は可能か?

 

試行的事業で余裕活用型は4割、専用室なしは7割


 こども家庭庁が9月30日付で公表した「こども誰でも通園制度の本格実施を見据えた試行的事業実施状況速報」によると、試行的事業に取り組む自治体は、予算上の150自治体を下回る118自治体で、9月までに受け入れを開始した自治体は111自治体にとどまることが明らかになりました。

 また、受入開始自治体における開始事業所数は798か所となっており、1自治体平均7か所程度となっていました。約1年半後に本格実施することを考えると、予想以上に低調であることが分かります。

 試行的事業の開始事業所798か所の内訳をみてみると、事業所類型は認可保育所が268か所(全体の33.4%)で最も多く、次いで幼保連携型認定こども園が237か所(29.7%)、小規模保育事業所A型が83か所(10.4%)、幼稚園型認定こども園が51か所(6.4%)、保育所型認定こども園が50かすよ(6.3%)などとなっていて、類型を問わなければ認定こども園が43%と全体の4割を占めています。保育所と合わせれば、全体の4分の3が認定こども園または保育所となっています。

 これに対して幼稚園は、施設型給付を受ける園が35か所(4.4%)、私学助成等を受ける園が28か所(3.5%)となっており、合わせても1割に満たないことが分かりました。保育所や認定こども園に比べて定員割れの園が多いにもかかわらず、試行的事業に取り組む園が少ないのは、試行的事業の対象が幼稚園の対象年齢ではない3歳未満児であることが大きな要因であると考えられます。

 地域子育て支援拠点や認可外保育施設、事業所内保育事業所、小規模保育事業所(B型、C型)といった他の施設等は、ごく僅かに過ぎません。

 実施方法をみると、定員割れの範囲内で受け入れる余裕活用型が346か所(43%)で最も多く、母体となる施設等の定員とかかわりなく自由に定員を設定する一般型(在園児と合同保育するタイプ)が248か所(31%)、一般型(専用室で独立して実施するタイプ)が204か所(26%)となっています。最も多い余裕活用型の受け入れについては、定員割れの状況に左右されるため、本格実施までに全国の教育・保育施設の定員割れがさほど拡大しないということであれば、自ずから受け入れ数に限界を生じることになるとみられます。

 このほか、一時預かり事業の実施の有無をみると、実施しているのが417か所(52%)、実施していないのが381か所(48%)とほぼ拮抗しています。誤解を恐れずに言えば、一時預かりは「保護者のための仕組み」であり、こども誰でも通園制度は「子どもの育ちのための仕組み」です。

 とはいえ、一時預かりが十分に提供されていなければ、保護者としては買い物や通院、リフレッシュなどのために誰でも通園制度を利用したいと考えるのは当たり前です。従って、一時預かりを実施していないところが5割近くあるということは、こども誰でも通園制度と一時預かりが混同される可能性も高くなるわけで、この2つの仕組みをどう区別して活用するかも今後の課題と言えそうです。

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