ポスト待機児童時代の認定こども園の利用調整とは ~直接契約のメリットを活かせるか?~
研究所メルマガvol.23
2024年6月20日

今回のメールマガジンでは、認定こども園の利用調整の緩和について取り上げました。市町村の委託で保育を実施している私立保育所と違い、直接契約である認定こども園は、地域に待機児童がいなくなれば、第1希望の保護者から優先的に選考することが可能です。
必ずしもタイムリーな話題というわけではありませんが、今回は認定こども園の利用調整について考えてみたいと思います。待機児童が大幅に縮小している中で、直接契約である認定こども園にとって利用調整を緩和するチャンスが来ているからです。
保育における利用調整というのは、ひとり親家庭の子どもや生活保護世帯の子ども、障害を持った子どもなどが排除されないよう、保育の優先利用を保障するための仕組みです。児童福祉の観点から2号・3号子どもについて適用されます。
保育認定を受けた子どもの数が保育所等の利用定員を上回っていた場合、保育の必要度の高い子どもが待機児童とならないよう、市町村が利用の優先度を決めて入所できるようにします。こうした優先利用の考え方があるため、市町村の委託により保育を実施している私立保育所はもちろんのこと、利用者との直接契約である認定こども園や小規模保育所なども、市町村の利用調整を受けることになります。
本来は、待機児童を生じているなど、保育需要が保育供給を上回っている場合に必要な考え方ですが、利用調整の規定としては、待機児童の有無にかかわらず、全ての市区町村が利用調整を行うよう求めています。そうはいっても、認定こども園等に関しては、利用者との直接契約であるという性格上、また利用者の選択や希望を重視するという観点から、市町村が強い利用調整をかけるということは本来馴染みません。
そこで、認定こども園等については、一定の条件を満たす場合、第1希望の保護者を優先的に選考することが可能になっています。具体的には、「待機児童がおらず利用状況に余裕がある市町村」あるいは「待機児童が0人またはそれに近い状況である市町村」であれば、第1希望の保護者の中から利用調整を行い、保育の必要度の高い順に入園を決定することができるとされています。
国の例示では、保育所を第1希望、認定こども園を第2希望とする保護者と、認定こども園を第1希望とする保護者がいた場合、認定こども園については、保育の必要度の高低にかかわらず、第1希望の保護者から優先的に選考されることになります。もちろん、第1希望の者が利用定員より多かった場合は、第1希望の者の中から必要度に応じた優先利用が適用されます。
また、3号子どもの待機児童が多い市区町村であっても、2号子どもについて待機児童が0人またはそれに近い状況であれば、3歳以上児についてだけ第1希望の保護者を優先的に選考するという弾力的な運用が可能とされています。
細かい具体的な要件については、ここで詳しく述べませんが、認定こども園等の利用調整を緩和するための基本的な要件としては、①地方版子ども・子育て会議で説明・了承を得ること、②利用者支援事業を活用して保護者の幅広い選択をサポートすること、③第1希望の選考に漏れた場合、その保護者を保育所の利用調整で救済できるようにすること、といったことが挙げられています。
少子化が加速する一方で、子育て安心プラン等による保育の受け皿整備が進み、ここ数年で待機児童が大幅に減少してきました。ということは、上述したように認定こども園のような利用者との直接契約である教育・保育施設は、一定の条件を満たした場合、第1希望の利用者を優先的に受け入れることができるようになります。
これは、市区町村の委託を受けている私立保育所と違って、ポスト待機児童時代の大きなアドバンテージとなります。何よりも利用者にとって、より希望する園に子どもを行かせられるというのは大きなメリットです。乳幼児人口の減少が続く中で、定員割れの施設が増えてくると予想されますが、これは保護者からすれば選択の幅が拡がるということでもあります。
認定こども園等にとっては、市区町村が強く関与する利用調整が大幅に緩和され、利用者の希望が尊重されることになれば、これまで以上に保育の質や園の魅力が問われることになります。まさに質の時代を迎えることになるわけです。
ただ、そのためには、既に述べたように、市区町村子ども・子育て会議に諮る必要があります。ただ待っていても市区町村側から積極的に利用調整方法の見直しを提起することはないと思われますので、認定こども園等の関係者が声を上げ、利用調整の見直しを求めていかなければなりません。そうした時期がそろそろやってきたのではないでしょうか。