マスメディアの地盤沈下が表す光と影
~プロフェッショナルが求められない時代?~
2026年10月19日

このコラムは、「閑話休題的な独り言コラム」となります。保育や子育て支援などに直接かかわる内容ではありませんが、物事をいろいろ考えたり、今昔の変化を感じたりしながら、様々な現象を捉える視点を提供したいと考えています。
ちょっと面白い話題や気になるキーワード、意外な変化などを取り上げて、頭の気分転換になるような軽いコラムを心掛けたいと思います。
新聞やテレビといったマスメディアの地盤沈下が著しいようです。東洋経済オンラインが配信した記事によると、メディアへの接触時間に占めるテレビの割合は2006年の約51%が2025年には約28%へと20年弱の間に4割以上も低下しています。新聞に至っては、約10%から約2%へと激減しています。その一方で、携帯・スマホは約3%から約38%へと大幅に上昇しています。(博報堂メディア環境研究所の「メディア定点調査2025」による)
新聞の発行部数をみると、ピークであった1997年の約5377万部から2025年には約2487万部まで減少し、ピーク時の半分近くまで落ち込んでいます。最も発行部数の多かった読売新聞の場合、1994年に朝刊発行部数が初めて1000万部を突破しましたが、現在は500万部を下回ったと報告されています。
新聞社全体の総売上高も、ピークであった2005年度の約2兆4200億円から2024年度には約1兆3100億円へとほぼ半減しています。(日本新聞協会による)
驚くのは、新聞の読者年代層の著しい変化です。東洋経済が独自に入手したという情報によると、某有力紙の顧客属性は、20代が1%、30代が2%、40代が5%、50代が11%、60代が22%、70代が33%、80歳以上が24%で、60代以上で全体の8割を占めるということです。
こうした大変化の大きな要因は、スマートフォンやタブレット、パソコンなどIT機器の普及による様々なSNSやYouTubeなどの爆発的な利用拡大です。しかも、これらの大きな特徴は、単に情報を得るだけではなく、自らが発信できるということです。
かつては、新聞社や通信社、テレビ局などが発信した情報を受け取るだけであったものが、今やあらゆる人が自ら情報の発信者となれる社会になったのです。それも、特別な技術や機器を必要とすることなく、手軽に簡単に低コストで文字や画像や動画といった多様な情報を社会に発信できるようになりました。
そして、生成AIの普及が、こうした傾向にさらに拍車をかけるのではないかと見られています。生成AIを利用すれば、より高度な情報の加工・発信が可能になります。
誰もが世界中に溢れかえる情報を気軽に入手でき、同時に発信もできるという、まさにSFのような世界が現実のものとなっています。その意味では、一人ひとりの個人が情報という武器を手にすることができるようになりました。
ただ、それに比例するように影の部分も拡大しているように思います。新聞社や通信社、テレビ局の記者は、一定の専門的なトレーニングを受けたプロです。記者だけでなく、誤報や表記・表現ミスのないよう、編集デスクや校閲部門など様々な組織体制が構築されており、一定の客観性や正確性が担保されています(最近は記者のレベルもかなり下がってきたと思いますが…)。
これに対して、一般の個人は専門的トレーニングも受けておらず、組織的なチェック体制もないまま、自由気ままに情報を発信することができます。というか、悪意を持って情報を流したり、意図的に情報を操作することが可能です。多くの例がそのことを物語っています。生成AIによって、それがより高度化、複雑化するのではないかと危惧されます。
このままマスメディア(各分野の専門誌も含めて)が凋落していけば、あるいは読者・視聴者に迎合するような体質を持つようになっていけば、世の中に流通する情報はどうなっていくのか。40年以上にわたって文字を綴り、言葉を発してきた者にとって、空恐ろしい社会の到来が戯言ではないように思われます。
