top of page
保育分野の2025年問題とは?~あと1、2年しかない対応期間~

研究所メルマガ vol.03

2023年6月22日

今月のメルマガ配信

このメールマガジンでは、メルマガ限定の情報をお伝えするほか、研究所のWEBサイト(ブログ)に掲載している「お知らせ&情報」の中から直近の情報を2~3つ改めて配信するとともに、会員ページに新たに掲載した情報メニューをお知らせします。

メルマガ限定コンテンツ


保育分野の2025年問題とは?~あと1、2年しかない対応期間~

「次元の異なる少子化対策」に向けて、政府のこども未来戦略方針が示され、2024年度からの3年間を集中取組期間とする「加速化プラン」が実施されます。

そのど真ん中の時期が2025年ということになりますが、この年がこども家庭政策にとっていろいろな意味で大きな節目になることが予想されます。もちろん保育分野においても同様です。筆者は、これをこども家庭政策の“2025年問題”と称しています。

いくつか具体例を挙げてみましょう。一つは、2015年度から施行されている子ども・子育て支援制度に関して、その実施主体である市町村が第3期事業計画をスタートさせるのが2025年度からとなります。これまでの第1期・第2期計画は、増大する2号・3号子どもの保育需要に対して必要な供給を行うこと、すなわち待機児童の解消を図ることが中心的な課題でした。

しかし、待機児童が急速に減少し、都市部でさえ保育所の定員割れが生じ始めたことから、次の第3期事業計画は従来の需給計画と大きく異なる方向性と内容になると考えられます。大げさに言えば、これまでの供給不足から一転して供給過剰になっていく中で、過剰な供給をどう縮小していくのかが課題となります。公立施設の多いところは統廃合が進むと思われますが、私立の場合は園児減に伴う経営難を乗り越えるための知恵と方策が求められます。そこに第3期事業計画がどのように関わっていくのか、重要な局面を迎えることになります。併せて、余剰の施設設備や人的・物的資源を従来の教育・保育以外のどこに振り向けていけるかも問われるでしょう。

2005年から施行され、2015年度から延長された次世代育成支援対策推進法も、さらに2025年度から期限を延長することになっています。そこでは、仕事と子育ての両立支援を中心に一般事業主行動計画や都道府県・市町村行動計画の作成が求められます。

また、今秋に閣議決定される予定のこども大綱を踏まえて、都道府県・市町村も地方版こども計画を作成することが努力義務とされています。こども大綱は、従来の少子化社会対策大綱、子供・若者育成支援推進大綱、子どもの貧困対策に関する大綱の3つを統合したもので、地方版の子ども・子育て支援事業計画や次世代育成支援対策推進行動計画とも密接に関連します。これも、恐らく2025年度にスタートすると考えられます。

今年度から実施されている「保育所の空き定員等を活用した未就園児の定期的な預かりモデル事業」は、これを全国化して「こども誰でも通園制度」に発展していくと見られています。正確な全国化の時期は未定ですが、上述した様々な動きを勘案すると、やはり2025年度から本格実施されるのではないかと思われます。

このほか、子どものための教育・保育給付等に関して、認定管理や請求・納付管理など市町村と利用者とのやりとりを電子化して、業務プロセス・情報システムを標準化することになっており、この子ども・子育て支援システム標準化がスタートするのも2025年度とされています。この時期には、保育現場のICT化やDX化がさらに進んでいると考えられます。

余談ながら、2025年には、団塊の世代が全て後期高齢者になって全人口の18%を占め、65歳以上は全人口の30%になると予測されています。昨年は出生数が過去最低の約77万人にまで減少しましたが、2025年以降は60万人台になる可能性もあります。

以上、見てきたように、こども家庭政策や保育政策に関して、2025年が一つの大きな節目を迎えることが分かります。そのための準備期間は、2年を切っており、実質的には1年半しかないと言えます。この1、2年の大きな山場をどう迎え、どのように対応するのか、2025年問題の行方が問われています。

bottom of page