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加速する私立幼稚園の保育所化! ~午後5時以降までの預かり保育と2歳児の定期受入れがスタンダード?~

研究所メルマガvol.18

2024年3月24日

今月のメルマガ配信1

 今回のメールマガジンでは、文部科学省がこのほど取りまとめた令和5年度幼児教育実態調査の中から、幼稚園の預かり保育実施状況や満3歳未満児の預かり状況に着目して、その実態を取り上げました。

 なお、年度末に向けて各種会議のとりまとめや調査研究報告書などがまとめられていきますので、随時そうした動きも取り上げていく予定です。

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加速する私立幼稚園の保育所化!?

~午後5時以降までの預かり保育と2歳児の定期受入れがスタンダード?~

 私立幼稚園の97%が預かり保育を行っており、その9割が夕方5時以降まで受け入れている──こんな実態が文部科学省がこのほど公表した資料から明らかになりました。満3歳未満児の預かりについても、約4割の園が実施しており、その半数以上が週5日、つまり毎日受け入れていました。

 制度上の幼稚園の基本的な姿は、1日の教育時間が4時間標準、年間39週(1週5日換算)、夏・冬・春休み等の長期休業があるというものですが、実態はこれと大きくかけ離れているようです。いわば幼稚園の保育所化と言っても、あながち間違いではないでしょう。

 文科省がこのほど公表したのは令和5年度幼児教育実態調査で、幼稚園における預かり保育実施状況や子育て支援関連活動の実施状況、幼稚園教諭免許と保育士資格・小学校教員免許の併有状況、研修の実施・参加状況等、ICTの配備・使用状況などをまとめています。

 この調査は、2年ごとに実施・公表されているもので、今年度は幼稚園8007園(公立2494園、私立5513園)から回答を得ています。

 それによると、預かり保育実施状況や満3歳未満児を預かる保育活動について、次のような調査結果が示されています。

〈預かり保育実施状況〉

◯預かり保育実施割合:私立幼稚園の97.1%(令和3年度に比べて0.2ポイント増)、公立幼稚園の77.4%(同1.0ポイント増)が何らかの預かり保育を実施している。

◯平日の預かり保育日数:私立は「週5日」が93.3%、週4日以下は5%程度であった。公立の場合も、「週5日」が88.9%と9割近くを占めていた。

◯平日の預かり保育終了時間:私立は「17~19時」が71.9%と最も多く、次いで「17時」が12.2%、「19時以降」が8.6%、「17時より前」が5.1%となっており、17時以降まで預かり保育を行うところが9割近くあった。公立のほうは、「17~19時」が43.3%と最も多く、次いで「17時より前」が31.2%、「17時」が21.7%、「19時以降」が3.1%となっていた。

◯預かり保育の実施内容:平日の受け入れ幼児数(1園1日当たり)は私立が17.4人、公立が6.4人となっていた。1園当たりの平均園児数が私立で122人程度、公立で36人程度ということを考えれば、預かり保育の利用割合は私立が14%、公立が18%と、公立のほうがやや多かった。

◯土曜日や長期休業中の実施状況:土曜日については私立が22.2%、公立が7.1%。長期休業中については私立が83.2%、公立が56.9%となっており、土曜日、長期休業中ともに私立の実施割合が高かった。

〈満3歳未満児の預かり状況など〉

◯満3歳未満児の預かり状況:私立の場合は、定期的に実施しているところが33.4%、保護者からの要望に応じて実施しているところが6.4%、合わせて約4割の園が満3歳未満児の受け入れを行っている。公立のほうは、わずか2.4%にとどまっていた。

◯受け入れ幼児の年齢:私立は「2歳児のみ」が70.9%と最も多く、次いで「1~2歳児」が16.8%、「0~2歳児」が7.7%となっていた。2歳児のみを受け入れている園が最も多いものの、4園に1園は0歳児や1歳児を受け入れている。

◯平日の預かり実施日数:私立の場合は「週5日」が56.5%と最も多く、次いで「週2日」が9.7%、「週1日」が9.4%、「週3日」と「週4日」がともに7.9%となっていた。7割強が週3日以上の預かりを実施していることになる。

 これらのデータからは、私立幼稚園の場合、97%が何らかの預かり保育を行っており、その9割以上が週5日つまり毎日預かり保育を実施していることが分かります。土曜日も預かり保育を行っている園が約2割あり、実質的に週6日開園していることになります。さらに、預かり実施園の約9割が夕方5時以降まで預かっていて、8割強が夏・冬・春休み等の長期休業期間中も預かり保育を実施しています。

 言い換えると、私立幼稚園の多くが保育所並の保育時間、保育日数を提供しており、2歳児保育もほぼ毎日行っているという実態を見る限り、機能においてかなり保育所化しているのが現実だと言わざるを得ません。

 統計上の「幼稚園」に幼稚園型認定こども園が含まれているため、認定こども園の有する保育所機能が調査結果にも影響している面はあると思います。けれども、8000園を超える回答の中で、幼稚園型は恐らく1300園ないと考えられることから、幼稚園そのものが変容してきていると言って差し支えないでしょう。

 認定こども園に移行せず、幼稚園のまま保育所的な機能を拡充していく状況が進んでいった先に、幼稚園は果たしてどこに向かっていくのでしょうか。

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