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未就園児の預かりで国と都区で補助金や利用時間に大きな差が!

研究所メルマガvol.19

2024年4月10日

今月のメルマガ配信1

 今回のメールマガジンでは、「こども誰でも通園制度」の本格実施に向けた試行的事業が始まることを踏まえて、東京都の類似事業との比較も行いながら、事業の成否を左右する今後の課題について考えてみました。

 なお、令和6年度を迎え、WEBサイトの新たな企画も準備を進めていますので、これからWEBサイトでも随時お知らせしていく予定です。

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未就園児の預かりで国と都区で補助金や利用時間に大きな差が!

~国の試行的事業と品川区の事業との違いとは?~

 「こども誰でも通園制度」の本格実施を見据えた試行的事業が各地で始まりつつあります。この試行的事業は、こども家庭庁の令和5年度補正予算に計上されたため、令和6年度を待たずに今年の早い時期から実施可能となっていましたが、新年度を迎える前に取り組み始めた自治体はほとんどなかった模様です。

 それどころか、予算上は150自治体程度を想定していましたが、どうも100を少し超えたくらいで足踏みをしているようです。手を上げた自治体でも、試行的事業の実施事業者をまだ募集しているところもあり、事業開始は早いところでも5月、多くの自治体では6、7月あたりとなっています。

 こども誰でも通園制度への期待が高かったにもかかわらず、試行的事業が低調なのは、やはり財政措置の少なさと月10時間上限という利用時間の短さが大きな要因だったのではないかと考えられます。その結果、手を上げる自治体が少なかっただけでなく、実施事業者として手を上げる施設・事業者も少ないのが実情のようです。

 一方、国の試行的事業とほぼ同じ事業として人気を集めているのが、東京都の「多様な他者との関わりの機会の創出事業」です。これは、国の試行的事業に比べて、自治体の負担が非常に少なく(試行的事業は国3/4、市町村1/4、都の事業は10分の10補助)、利用時間も長く(国は月10時間上限、都は月160時間上限)、補助額(都は年額約784万円)も多いため、都内の多くの区市で取り組むところが増えています。

 例えば、都の事業に取り組む品川区では、区独自の要素も織り込んだ「未就園児の定期的預かり事業」を区内22施設で実施する予定です。その特徴は、生後57日から2歳児までの未就園児を対象に、定期的に受け入れて保育を行うというもので、利用時間の上限は1日8時間まで、月に160時間までとなっており、財政措置も手厚いものです。

 同区の試算例では、週2回(月8日、1回8時間)利用する児童が3人の場合、補助額が42万7450円(施設基本額18万6250円+月額単価2万6000円×3人+日額単価6800円×8日×3人)、利用料が5万2800円(2200円×8日×3人)と示されています。補助額と利用料を合わせた施設の総収入額は48万250円となります。

 この「週2回(月8日、1回8時間)、利用児童3人」というのは、延べ利用時間に換算すると192時間となり、これを国の試行的事業に当てはめれば、例えば1人8時間(月1回)の利用で24人の利用児童となります。その場合の補助額は16万3200円(1時間850円×8時間×24人)、利用料は5万7600円(1時間300円×8時間×24人)で、合計した総収入は22万800円です。

 品川区の事業に比べると、国のほうは半分以下の収入となります。しかも、24人の子どもを日替わりのように迎え入れることになるため、健やかな育ちにつながる保育の安定的な提供や、安全面や管理面での配慮等を考えると、職員には大きな負荷がかかる可能性があります。

 令和8年度からの本格実施を円滑に進めるためには、今年度と来年度の試行的事業の実情を踏また上で、財政措置の拡充や利用上限時間の延長など抜本的な見直しが不可欠と言えそうです。

*このメルマガ情報の詳しい内容については、会員ページの「コラム・寄稿文」の中の「オリジナルコラム」に掲載しています。

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