現代版の「矛と盾」~AI時代のセキュリティをどう考えるか
他人事ではない保育現場
2026年10月30日

このコラムは、「閑話休題的な独り言コラム」となります。保育や子育て支援などに直接かかわる内容ではありませんが、物事をいろいろ考えたり、今昔の変化を感じたりしながら、様々な現象を捉える視点を提供したいと考えています。
ちょっと面白い話題や気になるキーワード、意外な変化などを取り上げて、頭の気分転換になるような軽いコラムを心掛けたいと思います。
企業等への不正アクセスが急増し、個人情報が漏洩したというニュースが連日のように伝えられています。今年4月以降で延べ約2億6千万人分にのぼるそうです(個人情報保護委員会のまとめ)。延べ人数とはいえ、日本の人口の2倍以上の数であり、中には免許証やパスポートの情報も盗まれたというから驚きです。
一説によると、不正アクセスにAIが使われていることから、サーバーやアプリケーションへの侵入が高度化・高速化し、巧妙にバグを見つけ出してセキュリティをくぐり抜けていくことが可能になったと見られています。
これに対して、防御する側もAIを使ってバグを見つけ出して修正したり、脆弱性を改善したりするなど、セキュリティ対策を強化する姿勢を強めています。
このように攻める側も、守る側も、高度に発達したAIを使いながら攻防戦が繰り広げられようとしている様を見ていると、「矛盾」という中国の故事を思い出してしまいます。
この「矛盾」とは、中国の古典『韓非子』に出てくる故事に由来します。あるとき楚の国の商人が、「どんな盾も突き通す矛」と「どんな矛も通さない盾」を自慢げに売っていたところ、「その矛でその盾を突いたらどうなる?」と聞かれて返答できなかった、という話です。
もし矛が盾を突き通すならば、「どんな矛も防ぐ盾」は誤りであり、もし突き通せなければ「どんな盾も突き通す矛」は誤りになります。つまり、どちらを肯定しても男の説明は辻褄が合わないことから、「矛盾」が「両立しない二つのこと」を指す言葉になったそうです。
今回の不正アクセスによる個人情報の漏洩問題も、AIを使ってどんな脆弱性も見つけ出し突き破る「矛」と、同じくAIを使っていかなる侵入も防ぐ「盾」との攻防です。大袈裟に言えば、どんなセキュリティも突破する「矛」と、どんなハッカーの攻撃も防ぐ「盾」の闘いです。
しかし、現実には「どんな盾も突き通す矛」と「どんな矛も通さない盾」というものは存在せず、盾を突き通す矛もあれば、矛を通さない盾もあるのが実態です。というより、ネット社会では、防御するほうが、やや劣勢に回らざるを得ないように思われます。
これらの動きは、保育現場も決して例外ではありません。1年半後には、改正個人情報保護法が施行され、情報リスクに適切に対応した規律の一環として、16歳未満の子どもに関する個人情報保護が強化されることになります
具体的には、入園時の個人情報や発達記録、写真・動画、ICTアプリ登録などが対象になると考えられます。その際、子どもの個人情報や顔写真・動画、ICTシステム、防犯カメラ・保育室内カメラ、ホームページ・SNSなどに関して、改めて利用目的を明確化し、保護者への周知・説明・同意取得を丁寧に行うことが求められます。
保育現場という「盾」が、外部からの様々な「矛」からの攻撃を防ぐと同時に、職員や保護者の「うっかり」リスクという内部の「矛」にも目を向けて、必要な対策を講じておくことが大切です。現代の「矛盾」に耐えられるよう園づくりも、今後の重要な課題となっています。
