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経営実態等の継続的な見える化とは?~保育分野でも進むシステム化、デジタル化、DX化~

研究所メルマガ vol.04

2023年7月5日

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経営実態等の継続的な見える化とは?~保育分野でも進むシステム化、デジタル化、DX化~

子ども・子育て支援分野では、保育者の慢性的な人材難に対処すべく、制度創設当初から処遇改善に積極的に取り組んできました。現在では、処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲという3種類の加算が行われています。この加算にとどまらず、より効果的な処遇改善を図り、保育者の安定的な確保、定着、ひいては保育の質の向上につなげていくことが、今後の大きな課題となっています。

ちなみに、処遇改善等加算Ⅰは、職員の平均経験年数や賃金改善・キャリアアップの取組みに応じた人件費の加算で、基礎分(職員の平均経験年数に応じたもの)と賃金改善要件分(賃金改善やキャリアアップの取組みに応じたもの)で構成されています。

処遇改善等加算Ⅱは、技能・経験を積んだ職員に係る追加できる人件費の加算で、副主任保育士等の中堅職員、及び職務分野別リーダー等の若手職員に対して、それぞれの職に応じて行う賃金改善となっています。今年度からは、段階的にキャリアアップ研修の受講が必須化されます。

処遇改善等加算Ⅲは、収入を3%(月額 9,000 円)程度引き上げるための費用を給付するというものです。給付額は 公定価格上の職員の配置基準を基に算定するため、職員を配置基準以上に配置している場合など、1人当たりの引き上げ額が月額 9,000 円を下回る場合もあります。

さて、本題に戻りますが、この処遇改善等加算Ⅲに関しては、岸田首相の肝いりとして始まり、当初は令和4年4月から9月まで「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業」として実施されました。それが、翌10月から補助事業ではなく公定価格における加算として提供されることになったものです。

その際、全世代型社会保障構築会議に設けられた公的価格評価検討委員会において、他の分野(医療、介護、障害等)の処遇改善とともに、「国民の保険料や税金が効率的に使用され、一部の職種や事業者だけでなく、現場で働く方々に広く行き渡るようになっているかどうか、費用の使途の見える化を通じた透明性の向上が必要」であり、「継続的な見える化に向けて必要な取組」を進めていく必要があるとの考え方が示されました。

これを受けて、保育分野においても、さらなる透明性の向上を図るためには、経営情報の公表やデータベース化等の継続的な見える化のための仕組みを検討する必要があるとの考えから、継続的な見える化に関する具体的かつ専門的な検討を行うため、内閣府子ども・子育て本部に「子ども・子育て支援制度における継続的な見える化に関する有識者会議」(座長=秋田 喜代美 学習院大学文学部教授)が設けられ、現在はこども家庭庁に引き継がれています。

その第5回会議が7月5日、オンラインで開催され、見える化に向けたデータベースの構築を中心に論議が行われました。筆者も副座長を務めている関係もあって、現時点であまり立ち入ったことはお話しできませんが、今月下旬から来月上旬のどこかで開かれる第6回会議において一定の取りまとめが行われる予定です。

今回を含めて議論した課題は、「継続的な見える化の目的と法令制度(法令制度への位置づけなど)」「収集する情報(新たに収集する財務情報や非財務情報など)」「公表の方法」「対象組織の範囲と例外措置」「事務負担への配慮」「データベースの構築」「集計・分析・公表までの流れとプラットフォーム(既存の「ここdeサーチ」のプラットフォーム化など)」といったものです。

将来的には、現在の経営実態調査に代わって、「ここdeサーチ」がプラットフォームとなり、認定こども園や保育所、幼稚園等の教育・保育施設や事業者がWEB入力やExcelのアップロードによってデータをアップすることになりそうです。それがデータベース化され、保育・幼児教育分野の継続的な見える化に活用される見通しです。見える化に当たっては、職員の処遇改善や配置改善等の実施状況をはじめ、公定価格の検証・見直しのための基礎情報の把握を図るとともに、保育・幼児教育が置かれている現状・実態に対する国民理解の醸成のために必要な情報を収集・公表することを目指します。

公定価格の検討に資する次の経営実態調査は、令和6年度中に行われることが想定されますが、継続的な見える化の一環として「ここdeサーチ」への入力などが、経営実態調査に代わって実施される可能性もありそうです。あるいは、間に合わないとすれば、令和7年度から見える化が本格スタートすることになるかもしれません。

ちなみに、給付認定管理や契約・利用調整など利用者と市町村をデジタルでつなぐ子ども・子育て支援システム標準化については、既に具体的な検討が行われ、順調にいけば令和7年度からスタートする予定です。保育分野のデジタル化、DX化、システム化は、予想以上に早いテンポで動いていきそうです。

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