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自治体で分かれる誰でも通園制度への対応 ~福岡市は独自に週40時間まで利用可能に~

研究所メルマガvol.17

2024年2月19日

今月のメルマガ配信1

 今回のメールマガジンでは、こども誰でも通園制度の本格実施を見据えた試行的事業をめぐる自治体の状況について取り上げました。

 なお、通常国会が始まり、年度末に向けて様々な政策的動向が予想されますので、今後も随時そうした動きを取り上げていく予定です。

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自治体で分かれる誰でも通園制度への対応 ~福岡市は独自に週40時間まで利用可能に~

 こども誰でも通園制度(仮称)の本格実施を見据えた試行的事業が、実施を希望する各自治体でまもなく始まろうとしています。とはいえ、「こども誰でも通園制度」そのものに対する関心や期待は高いものの、試行的事業では利用時間の上限が月10時間と短いことや、補助金が子ども1人1時間当たり850円(保護者負担は300円程度が標準)とされていることなどもあって、試行的事業に積極的に取り組もうとする自治体や施設がさほど多くないのではないかと見られています。

 こども家庭庁が公表したデータによると、今年1月17日現在で実施自治体は108自治体となっていて、当初想定していた150自治体程度からすると3分の2程度にとどまっています。また、実施を予定する自治体でも、補助単価が低いこともあって、実施に手を挙げる施設・事業者も意外に少ないという話も耳にします。

 その一方で、福岡市のように、独自に予算を計上して、国の試行的事業を拡充して実施するところもあります。同市では、「福岡市型」こども誰でも通園制度を実施するとして、令和6年度予算に約4億8500万円を計上し、実施施設も利用時間も大幅に引き上げることとしています。

 同市は今年度、保育所の空き定員等を活用した未就園児の定期的な預かりモデル事業に取り組んでおり、3施設で120人の利用枠となっています。これが、来年度からは30施設、約1000人まで大幅に拡充する予定です。さらに、利用時間については、月10時間の上限時間を独自に最大40時間まで拡大することとしています。そこには、「全国のロールモデルとして国の基準を超えて実施する」という意気込みがあるようです。

 これに関して、髙島宗一郎市長は、2月15日に行った会見の中で、「去年の8月から福岡市ではモデル事業として開始をしていたが、実際応募したところ利用枠の3倍の申し込みがあって、非常にニーズがあるということもよく分かった」と事業ニーズの高さを指摘した上で、「福岡市では国が示しているそのモデルの4倍となる月40時間を上限とする。また、利用枠を現在のモデル事業の120人から1000人超、施設数も3施設から30施設程度と、現在のおよそ10倍に拡充をして実施をする。こうした形でしっかりとで未就園児の皆さん、それからその家族というところも支援をしていきたいと思っている」と意気込みを語っています。

 他方、東京都品川区は、福岡市と同様に未就園児の定期的な預かりモデル事業を小規模保育所で実施していますが、来年度は試行的事業を行わないことにしています。やはり利用時間の上限が短いことに加えて、補助単価その他の条件が厳しいこともその要因ではないかと考えられます。

 ちなみに、同区の場合、モデル事業では週2回、1日に7~8時間程度の利用としていますので、月に60時間程度の利用となっています。

 また、同区では、東京都が「多様な他者との関わりの機会の創出事業」として、国のモデル事業とほぼ同じような事業を実施していることから、今年度は国のモデル事業を1か所、都の事業を8か所(認可保育所、小規模保育所)で実施しています。国の試行的事業の補助率が4分の3であるのに対して、都の事業は10分の10補助で実施条件も自由度が高いということもあって、来年度は国の試行的事業を見送る一方で、都の事業を活用して独自の未就園児預かり事業を今年度の3倍近い22施設で実施する予定です。

 同区では、「対象施設を幼稚園まで拡大するとともに、実施施設数、受入れ枠を拡充することで、未就園児の子育て家庭のさらなるウェルビーイングの実現に寄与する」ことを目的に、国の「こども誰でも通園制度(仮称)」の本格実施を見据えながら、「しながわモデル」の確立を目指すとしています。

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