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執筆者の写真吉田正幸

国・地方公務員の地域手当を都道府県単位に広域化



 

保育所や認定こども園、幼稚園等の地域区分も見直しへ


 この夏の人事院勧告において国家公務員の地域手当を見直す考えが示されていましたが、これを踏まえて総務省は地方公務員の地域手当についても同様に見直し方針を明らかにしました。これら一連の動きからすると、教育・保育に係る公定価格においても、地域区分の見直しが行われるのはほぼ確実だと思われます。

 そもそも地域手当は、民間の賃金水準が高い都市部などに勤める公務員に対して、その賃金格差を縮めるために支給されているものですが、現在は市町村単位で支給割合を定めているため、「隣接する市町村との関係で不均衡が生じている」といった意見が出されていました。

 そこで、人事院勧告では、「地域手当の級地区分の設定は、都道府県を基本として行うこととする」として、現在の市町村ごとに適用している地域区分を都道府県を基本とするよう見直すことを明らかにしていました。

 具体的には、現行の8段階(非支給地を含む)ある級地区分を設定する地域の単位を広域化するとともに、級地区分の段階数を6段階(非支給地を含む)に減らして大くくり化を図というものです。その結果、「1級地 100分の20」「2級地 100分の16」「3級地 100分の12」「4級地 100分の8」「5級地 100分の4」「非支給地」となり、多くの地域では地域手当が増額になります。(*令和7年度の地域手当の級地別支給割合は別表を参照)

 ただ、支給割合が現行より引き下げとなる市町村も生じるため、その場合は激変緩和のための措置として、支給割合の低下幅が4ポイントを超えない級地区分とし、給与水準が著しく低下しないよう配慮します。

 また、同一の都道府県内であっても県庁所在地や人口20万人以上の市では、全国展開する民間企業の支社・支店等も所在しているなど、他の地域と民間賃金水準に構造的な違いが見られるため、都道府県とは別の級地区分を個別に設定するします。中でも東京都特別区は、全国展開する企業の本社が多く所在し、民間賃金水準も他の地域と比べて高いことから、個別の級地区分を設定します。

 とはいえ、最大20%という地域手当の支給割合の差が大きすぎるのではないかとの指摘もあるため、支給割合の差の在り方について今後とも検討していくことになりました。

 同様に、地方公務員に関しても、人材確保が厳しいという事情も鑑みて、支給地域を市町村単位から都道府県単位を基本とする方向に見直すことになりました。松本剛・総務大臣が閣議後の記者会見で明らかにしたものです。

 また、県境などの市町村では、隣接自治体との差を縮めるために、基準を超えて独自に上乗せしているところもあります。これに対して、現在は独自上乗せを行った市町村の特別交付税を減額していましたが、この減額措置を廃止する方針も明らかにしました。10月にも方針を決め、来年4月からの運用を目指すとしています。

 一方、保育所や認定こども園、幼稚園などの教育・保育給付に係る公定価格においても、地域ごとの⺠間の給与⽔準を反映させている国家公務員・地⽅公務員の地域⼿当の⽀給割合の地域区分に準拠して、8区分に設定しています。

 来年度から国・地方とも公務員の地域手当が、市町村単位(8区分)から都道府県単位(6区分)に見直されることになれば、これに準じて公定価格の地域区分も見直しになると考えられます。これによって地域区分の不公平感はかなり緩和されることになりますが、それでも「その他地域」の0%から東京23区の20%まで幅があるだけに、その差をどう捉えるか今後さらに検討する必要がありそうです。


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