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保育人材の確保で重要な課題が明らかに

  • 執筆者の写真: 吉田正幸
    吉田正幸
  • 1 日前
  • 読了時間: 3分

小規模施設の優位性、地方から都市部への人材流出、養成校の危機etc.


 三菱UFJリサーチ&コンサルティングがこのほど、「保育人材確保にむけた効果的な取組手法等に関する調査研究報告書」をとりまとめました。これは、こども家庭庁の令和6年度調査研究事業の一環として行われたものです。

 それによると、保育所等(認可保育所、保育所型認定こども園、幼保連携型認定こども園、地域型保育事業)を対象にしたアンケート調査から、保育人材確保をめぐる状況について、以下のような興味深いデータが明らかになりました。ごく一部を紹介しておきます。

 なお、この調査研究報告書の全体を知りたい方は、三菱UFJリサーチ&コンサルティングのホームページからダウンロードすることができます。

◇施設種別では、人材不足感について保育所や認定こども園が軒並み80%を超えているのに対して、小規模保育などの地域型保育事業は約68%と低い傾向がみられた。

 ⇒ 最近の保育者は規模の大きな園より規模の小さな園を希望するケースが多いという声をよく聞いていましたが、そのことがデータとして明らかになったと言えそうです。

◇人材の不足を感じる場面については、「職員の休暇取得の調整」(66.6%)、「延長保育の時間帯」(59.1%)、「代替職員の確保」(54.6%)、「勤務時間内の研修受講や会議の実施」(53.2%)、「早朝保育の時間帯」(51.4%)などが挙げられていた。

 ⇒ 従来から言われていたことですが、やはり長時間保育が保育人材の確保にとって大きなネックになっているようです。また、いわゆるノンコンタクトタイムが十分に取れていないことも、現場にとっては大きな課題と言えそうです。

その結果、特に不足していると感じる人材については、「早番や遅番の担当保育士」が約72%と最も多く挙げられていました。

◇採用面で課題となっている要因をみると、「給与等の待遇」が45.9%で最も多く、次いで「都市部、近隣自治体への人材流出による母集団不足」が25.4%、「採用に関する情報発信」が21.7%などとなっていた。

◇「都市部、近隣自治体への人材流出による母集団不足」については、人口規模が「1万人未満」の保育所等で51.0%と半数を超え、「1万人以上5万人未満」で35.8%と、人口規模の小さい自治体で人材流出が深刻化している。

 ⇒ 人口規模の小さな自治体ほど都市部や近隣自治体に人材が流出していることが浮き彫りになっており、少子化による乳幼児人口の減少以上に深刻な問題になっていることが分かります。

 人口減少地域においては、多機能化を図ることが重要な方策の一つとされていますが、多機能化を図ろうにも肝心の人材が確保できない可能性が出てきています。

◇人材採用に効果があった取り組みについては、「保育士養成校との連携」が20.5%で最も多く、次いで「職場見学の実施」が13.7%、「求人条件の明確化など求人情報の表示内容の工夫」が10.5%などとなっていた。

 ⇒ 保育人材の採用にあたっては、「保育士養成校との連携」がかなり効果的であることが示されていますが、その養成校が近年、学生募集停止に追い込まれるところが相次いでいます。保育人材の確保については、処遇改善や職員配置の改善はもちろんですが、その手前の養成段階から対策を講じなければ、保育人材の深刻な供給不足に陥る可能性さえ出てきています。

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