次期改定で0歳児からの育ちと学びを重視
- 吉田正幸

- 1 日前
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保育所や認定こども園の教育・保育内容の見直しへ
こども家庭庁と文部科学省はこのほど、保育専門委員会と幼児教育ワーキンググループの第3回合同会議を開き、育みたい資質・能力の在り方や資質・能力の育成に向けた内容の改善・充実について協議しました。そこでは様々な課題をめぐって論議されましたが、ここでは「0歳児からの育ちと学び」に焦点を当てて取り上げておきます。
この中で、0~2歳児の保育利用が増え続けていることを背景に、「0歳児からの育ちと学びの連続性・一貫性の確保」についても検討課題に挙げられました。これは、保育所や認定こども園に関わる課題であって、満3歳以上児を対象にする幼稚園には直接的に関係するものではありませんが、私立幼稚園の中には2歳児をプレスクール的に受け入れているところも少なくありませんし、こども誰でも通園制度が来年度から本格実施されることを踏まえれば、幼稚園等も含めて目を向けておくべき課題だと考えられます。
今回の会議で文科省が提示した資料によると、「0歳児からの環境を通して行う保育における教育に関わる側面での活動の連続性及び発展的な広がりを確保することが重要である」と指摘し、3歳未満児に対する養護と教育が一体となった保育においても教育的な側面の重要性を認めています。
特に、保育所や認定こども園等では、「在園期間が0歳児から5歳児という長期にわたり、また1日の保育時間が長時間に及ぶ」ことから、「乳幼児の生活と発達の連続性を念頭に置きながら、園での日々の生活や遊びの更なる充実を図っていく必要がある」と説明しています。
3歳未満児の教育的な側面やその重要性については、諸外国の調査研究でも次第に明らかにされてきており、保育所保育指針や認定こども園教育・保育要領の見直しに当たっても、「0歳児からの育ちと学びの連続性・一貫性の確保」が大きなポイントの一つになりそうです。
こうしたことを踏まえて、同省の資料では、「内容の改善・充実の方向性(案)」として、「0歳児からの育ちとともに、学びを支える保育の内容の充実」について以下のような方向性が示されました。(ポイントと思われる箇所に筆者が下線)
○座る、はう、歩くなどの運動機能の発達に伴い、乳幼児は自ら体を動かし、身近なものに関心をもって関わり、探索活動を活発に行うようになっていく。こうした発達の流れに沿って、0歳児からの自発的な遊びの中で多様な動きを促す援助の充実を図ってはどうか。
○保育士、保育教諭等による温かく丁寧な関わりを通して育まれる安心感や信頼感の下、乳幼児が自分なりに、思いや考えを表現しようとしたり、他の乳幼児への関心を深め自ら関わろうとしたりする意欲を支える援助を充実させてはどうか。
○乳幼児の自発性や探索意欲を高めるよう環境を計画的に整え、乳幼児が自ら関わろうとする姿を保育士、保育教諭等が見守り、共感し、楽しさを共有するとともに、乳幼児の主体的な遊びや活動を更に豊かにしていくために、遊びや活動の展開に応じて環境を構成・再構成することの重要性を再確認してはどうか。
このうち、「保育教諭等による温かく丁寧な関わりを通して育まれる安心感や信頼感」というのは、「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン」でも強調されているアタッチメント(愛着)につながるものです。これについてビジョンでは、次のように説明しています。
「こどもの育ちに必要な『アタッチメント(愛着)』は、こどもが怖くて不安な時などに身近なおとな(愛着対象)がその気持ちを受け止め、こどもの心身に寄り添うことで安心感を与えられる経験の繰り返しを通じて獲得される安心の土台である。また、『アタッチメント(愛着)』は、こどもが自分や社会への基本的な信頼感を得るために欠くことのできないものであり、こどもの自他の心への理解や共感、健やかな脳や身体を発達させていくものである。」
これに関して、現行の保育指針や教育・保育要領においても触れられてはいますが、「子どもが安心感と信頼感をもって活動できる」(保育指針)、「安心感と信頼感をもっていろいろな活動に取り組む体験を十分に積み重ねられる」(教育・保育要領)といった程度に過ぎません。
次の新しい指針、要領では、「アタッチメント(愛着)」の観点も含めて、「0歳児からの育ちと学びの連続性・一貫性の確保」に向けた記述が充実するのではないかと考えられます。これによって、0歳から5歳、さらには18歳までを見通した発達や学びの連続性の確保の観点から、乳幼児期の子どもの育ちと学びが組み立てられているのではないでしょうか。
保育所や認定こども園にとっては、これらの考え方を活かしながら、どう教育・保育の質を高めていくかが問われます。幼稚園においては、直接的な対象ではない3歳未満児へのアプローチをどう組み込むかが問われそうです。
なお、合同会議の正式な構成は、中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会幼児教育ワーキンググループとこども家庭審議会幼児期までのこどもの育ち部会保育専門委員会となっています。

