人事院は8月7日、有為な人材の確保を念頭に、初任給をはじめとする若年層に重点を置いた給与に関する勧告を行いました。
それによると、若年層に重点を置いて初任給をはじめとする俸給表を引上げるとともに、ボーナスを年間4.40月分から4.50 月分へと0.10月分引上げるよう勧告しました。その結果、高卒で約8%(12,000円)、大卒で約6%(11,000円)の引き上げで、高卒、大卒とも初任給が1万円以上増えるのは33年ぶりとなります。
これに伴い、保育所や認定こども園、幼稚園などの公定価格も引き上げられることになります。なぜならば、公定価格の算定にあたっては人件費・事業費・管理費等について、各々対象となる費目を積み上げて算定しており、このうち人件費の額については国家公務員の給与に準じて算定しているからです。
今回の勧告を踏まえて、公定価格上の人件費に係る単価表がどのくらい改定されるのか、まだ具体的には分かりませんが、近年の人勧としてはこれまでにない大幅な給与改善が図られることから、保育士等の給与も一定レベル以上の引き上げが行われることは確実だと思われます。
これに関連して、昨年の人勧では、「民間との給与比較を行っている行政職俸給表(一)について、平均0.3%引き上げる」とされていましたが、今回は「民間との給与比較を行っている行政職俸給表(一)について、平均1.1%引き上げる」とされています。
また、昨年は「1級、2級及び3級の平均改定率はそれぞれ1.7%、1.1%及び0.2%となる」とされていたのが、今回は「1級、2級、3級及び4級の平均改定率はそれぞれ5.2%、2.8%、1.0%及び0.4%となり、5級以上の平均改定率はいずれも0.3%となる」とされており、やはり昨年に比べて大幅な増額改定になりそうです。
ちなみに、改定された福祉職俸給表によると、短大卒の初任給は1級11号棒で18万9600円、大卒の初任給は1級21号棒で20万2500円となっています。昨年は、短大卒の初任給が17万6900円、大卒の初任給は19万1200円となっていましたので、今回はそれぞれ1万2700円、1万1300円の増額となっています。
ただ、保育士等の給与が引き上げられることは喜ばしいが、人勧の基本は民間給与との水準を均衡させることが基本であり、民間給与との格差が縮まるわけではありません。職種別平均賃金(月収換算)をみると、保育士の給与は全産業平均と比べて4~5万円ほど低いのが実情です。人勧によって給与が上がったとしても、それで直ちに民間企業等との差が縮まることにはなりません。
そう考えると、人勧のアップによる公定価格の引き上げ改定にとどまらず、引き続き各種処遇改善を図ることが重要になると考えられます。
Comments