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執筆者の写真吉田正幸

幼稚園30人学級を目指す意味と課題

 

学級編制や職員配置の基準差が生み出す歪み


 小学校の35人学級化が令和7年度で完了し、中学校のほうは令和8年度から順次35人学級化に取り組んでいくようですが、肝心の幼稚園については1学級30人以下を目指す方針こそ示されたものの、具体的にいつから、どのような形で進めていくのかがはっきりしていません。

 一方、現行の幼稚園設置基準では、幼稚園は3、4、5歳児いずれも1学級35人以下とされていますが、子ども・子育て支援制度においては令和7年度から0歳児が3:1、1・2歳児が6:1(1歳児は加算で5:1)、3歳児が15:1、4・5歳児が25:1となります。

 幼稚園該当年齢だけみると、施設型給付において3歳児が15:1、4・5歳児が25:1という職員配置基準となります。3歳児だけ見てみると、私学助成(35人学級)と給付(15:1)とで2倍以上もの開きがあります。

 これは単に園の財政面だけでなく、職員の業務負担面においても、園児の教育環境の面においても、大きな差を生じる要因となっています。私立幼稚園の場合、従来通り私学助成を受ける園として残るか、いわゆる新制度に移行して給付を受ける園(認定こども園を含む)になるか、選択肢があるとはいえ、職員配置でここまで差が拡がってくると、もはや実質的な選択肢はないに等しいのではないでしょうか。

 しかも、30人学級が実現した場合、幼稚園設置基準を改正する必要があり、それに伴って幼稚園教諭の配置や園舎・運動場の面積に係る基準も見直されることになります。

具体的には、1学級30人以下にするため学級数が増えた場合、専任の幼稚園教諭も増やすだけでなく、園舎の面積は1学級増えるごとに100平方メートル、運動場の面積は1学級増えるごとに80平方メートル、それぞれ増やさなければなりません。この考え方は全ての幼稚園に適用されるため、給付を受ける幼稚園も、幼保連携型認定こども園も同様です。

文科省の調査では、令和5年度の時点で既に94%の園が1学級30人以下となっており、大杙の幼稚園にとって30人学級への移行はむしろ遅すぎたとさえ言えるかもしれません。しかも、30人学級を実現したとしても経営面でのメリットはほとんどなく、園によってはむしろ人材確保や施設整備等の負担のうほうが大きくなる可能性があります。

30人学級への移行に際して、何らかの激変緩和措置が講じられたとしても、幼稚園から認定こども園に移行しようとする場合など、30人学級を前提とした新基準への適合を求められる可能性もあり、それが認定こども園化の足かせとなる恐れも出てきそうです。


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