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人勧の処遇改善で約3割の施設が年度超え

  • 執筆者の写真: 吉田正幸
    吉田正幸
  • 10月21日
  • 読了時間: 3分

市町村による施設への支払いも割強が年度超え


 こども家庭庁はこのほど、教育・保育施設・事業所における職員の処遇改善に係る実態調査結果(概要)を公表しました。それによると、令和6年人事院勧告を踏まえた公定価格の改定で、改定分の給与支払いについて、年度内(令和7年3月)に職員に支払った施設等は約7割、施設等に支払った市町村は約3割であったことが分かりました。

 施設等の支払い状況をみると、年度内しかも令和6年12月に支払ったところが約14%あった一方、年度を超えて令和7年6月・7月に支払ったところも約13%あるなど、施設等によって支払時期に大きな開きのあることが明らかになっています。

 市町村については、年度内の1~3月までに施設等に10割支払ったところが約28%あった一方、令和7年4月までが約28%、5月までが約44%あるなど、7割以上の市町村が年度を超えて施設等への支払いを完了している実態が明らかになりました。

 今回の人事院勧告に伴う公定価格の給与改定は平均10.7%もの大幅アップとなったこともあって、施設や市町村にとって大きな金額になるため、支払いについても前払いや概算払いの対応が難しかったことも影響していると考えられます。ただ、それにしたところで年度を大幅に超えての支払いは、職員に対して決して好ましいことではありませんし、施設側も会計処理などが面倒になるなど、いろいろ問題を抱えていることは確かです。

 支払いが遅くなっている背景について、同庁では「改定分の額を算出する上での前提となる加算の認定が12月時点で終わっていないこと」や「改定分の額を翌年度の処遇改善等加算の実績報告まで計算していない実態があること」を挙げています。そもそも8月の人事院勧告を踏まえて、実質的には翌年になって改定分の支給額が決まり、それを前年4月に遡って支払うという仕組みに無理があるのではないでしょうか。

 国・自治体ともに人勧以降に補正予算を組む必要があるということに加えて、年度をまたぐという微妙な時期にあたるということ、さらに4月に遡った改定分は既に完了した月の給与に反映できないことを考えれば、改定年度だけは翌年夏の賞与までに支払えばよいことにするなど、弾力的な対応策を講じるほうが現実的かもしれません。

 実態調査結果の主な概要は次の通り。

○改定分については、約99%の施設・事業所において、人件費として充当する又は充当する予定としているとの回答があった。

 なお、残り1%については、人件費として充てる必要性を認識していない回答も見られたため、今後、指導の徹底を求める。

○補正予算は令和6年12月に編成されたところ、令和7年7月時点で全額支払い済みの施設・事業所が約73%、一部支払い済みの施設・事業所が約17%あり、令和7年3月までに保育士・幼稚園教諭等への支払に着手した施設・事業所は全体の約63%であった。

一方で、支払が完了するのは令和7年12月以降になると回答した施設・事業所は全体の約17%となっており、支払時期にバラつきがあり、中には冬季賞与と併せるために12月に支払うといった回答も見られ、改定分は当該年度の給与の遡及分である趣旨が十分に浸透していない状況も見られた。

○支払が遅くなる背景には、改定分の額を算出する上での前提となる加算の認定が12月時点で終わっていないことや、改定分の額を翌年度の処遇改善等加算の実績報告まで計算していない実態があることがうかがえた。

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