こども誰でも通園制度の利用ニーズをどう把握するか
- 吉田正幸

- 10月5日
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こども家庭庁が市町村事業計画の量の見込み算出で事務連絡
こども家庭庁は9月29日付で、第三期市町村子ども・子育て支援事業計画等における「量の見込み」の算出等の考え方(改訂版 ver.3)についての事務連絡を発出しました。この中で、来年度から給付制度として始まる乳児等通園支援事業(こども誰でも通園制度)の量の見込みの算出方法を示しています。
ただ、対象となる生後6か月から満3歳未満の未就園児数は把握できても、このうち何パーセントくらいが利用するかを算出するのは簡単ではありません。利用乳幼児の量の見込みが適切に算出されなければ、それに対する十分な供給確保方策を盛り込むことも難しくなります。ひいては認定こども園や保育所、幼稚園、小規模保育事業その他の受け入れ体制をどう調整するかも見通しが立たず、混乱を招きかねません。
同庁は、量の見込みの算出に当たって、「必要受入れ時間数」と「必要利用定員総数」の2つを組み合わせて、見込み数を算出するよう求めています。
同庁が示した必要受入れ時間数についての基本的な算出式は、対象未就園児数 × 月一定時間(10時間)としています。しかし、これでは対象となる未就園児全てが利用する前提となるため、量の見込みが過大に算出されてしまいます。このため、事務連絡では、これを基本とするものの、市町村において算出式に利用割合を乗じて算出することも可能とするほか、市町村独自に必要受入れ時間数を算出することも可能とする、としています。
一定の利用割合を乗じる場合は、「トレンドや政策動向、地域の実情等について十分考慮する」よう求めていますが、そのこと自体も決して容易ではありません。そこで、利用ニーズの把握については、こども誰でも通園制度の利用希望の把握を行うための調査を行うことも考えられるとしていますが、年内にニーズ把握と必要量の推計を行い、第三期子ども・子育て支援事業計画に反映させることは不可能です。
これに関して事務連絡では、「利用ニーズの把握が困難な場合は、例えば、乳児家庭全戸訪問事業や妊婦等包括相談支援事業においてこども誰でも通園制度の利用の意向を把握する、一時預かり事業の利用者にこども誰でも通園制度の利用の意向を調査する等の工夫を検討すること」としています。とはいえ、これも実際には簡単なことではありません。
また、一定の利用ニーズに対して、「提供体制に不足が見込まれる場合には、乳児等通園支援事業を行う事業所の定員増等により確実に提供体制を整備すること」としていますが、定員増や受け入れ施設・事業者の拡大もそれほど簡単に行えるわけではありません。
特に、未就園児が多いと予想される都市部ほど、利用ニーズの見込み(需要予測)を立てるのが難しく、同時に必要な受け入れ体制の整備(供給拡大)を図るのも容易ではないと考えられます。とりわけ給付の実施初年度である令和8年度は、事業計画上の量の見込みと供給確保方策に一定以上の乖離を生じる可能性が高いだけに、翌年度以降の軌道修正をどう図るかが市区町村にとって最大のポイントになりそうです。

