若者の労働時間短縮が少子化対策に有効!
- 吉田正幸

- 9月23日
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若者の賃金上昇も出生率の引き上げに寄与すると試算
こども家庭庁のこども家庭審議会基本政策部会が9月22日に開かれ、こども施策の動きや今後の進め方について論議しました。この中で、柴田悠・京都大学教授が「こども政策への意見」を提出し、出生率の引き下げに寄与する政策について、具体的な試算を示しているのが注目されます。
それによると、直近の政府統計から計算した希望出生率は「1.6」程度、一方で実際の出生率は2024年で「1.15」で、女性1人あたりで平均すると「およそ0.4人分」実現できていないと指摘しています。
その上で、この0.4人分のギャップを縮めていくために、以下のような支援策を実施した場合の政策課的な効果を試算として示しています。
◇2024年度から26年度までの現行の「加速化プラン」によって、出生率は約「0.1」引き上がる
◇仮に2026年から35年まで若者の賃金が「毎年4%」上がると、出生率は約「0.2」引き上がる
◇仮に「保育士の更なる賃金改善と配置基準改善」をした上で、2026年から35年までかけて「1~2歳人口に対する保育定員率」を100%にすると、出生率は約「0.1」引き上がる
◇仮に「労基法改正」による「残業割増率の現行の『基本25%』から欧米並みの『基本50%』への引き上げ」などによって、2026年から35年までかけて経済水準が下がらない形で、「正規雇用の男性の平日1日の平均労働時間」(2021年9.9時間)が「2時間」短縮されて欧米並み(約8時間)になると、出生率は約「0.35」引き上がる
これらの試算を踏まえて、現行の「加速化プラン」以外の賃金や労働に関する追加策を何もしなければ、「価値観の多様化などによって、出生率の今の『低下トレンド』は続いていく」と指摘。しかし、仮に上述の若者の賃金引き上げや保育士の賃金改善・配置基準改善、平均労働時間の短縮に向けた政策を全て実施すれば、「出生率は2035年には「1.6」程度になり、現在の若者の希望出生率に達すると見込まれる」としています。
柴田教授は、こうした 定量的な推計などに基づいて「粗い試算」を行ったものであり、「政府は可能な範囲で定量的に、支援策を検討」し、「科学的根拠を参照した政策形成」を進めるよう求めています。
ただ、これらの支援策をすべて実施したとしても、「やはり価値観の多様化などによって出生率は低下して」いき、2050年には出生率1.3まで下がると試算しています。

