共感性を高める教育・保育への手掛かり

「近ごろの若者」観をエビデンスベースで捉え直すと
9月12日付の日本経済新聞(Web版)に興味深い記事が載っていました。おおよそ次のような内容でした。
「最近の子どもは昔に比べて精神的に不安定で打たれ弱く、共感性に乏しい……と、感じる人は少なくないだろう。2025年に米国で実施されたある調査でも、保護者1300人のうち約6割61%が『打たれ弱く自立していない』と答えていたが、これは本当だろうか?」
「インディアナ大学インディアナポリス校の社会心理学者コンラートの調査研究によると、1979年から2009年の30年間で若者の共感力が急激に低下したと発表したが、その後さらに2018年まで調査したところ、若者の共感力と視点取得能力(他者の思考や意図を判断する能力)は近年、増加、回復している」
「こうした改善傾向の背景には、教育手法と子育て方法の変化があると考えられる。全米研究評議会と米国医学院(現米国医学アカデミー)が2000年にまとめた報告書では、保護者と学校、保育所は、子どもの社会性と情緒の育成に何よりも力を入れる必要があると強調している」
要は、多くの大人が嘆く「近ごろの若者は…」(昔に比べて打たれ弱く、共感性にも乏しい云々)といった若者観には根拠のないことが調査研究で明らかになっていて、むしろそれぞれの時代の社会情勢や変化に応じて変動するものだと考えられるということです。
加えて、社会性と情動の学習が重要であるとも指摘されていて、こうした改善傾向の背景には、教育手法と子育て方法の変化があると考えられています。その例として、全米研究評議会と米国医学院(現米国医学アカデミー)が2000年に発表した報告書では、「保護者と学校、保育所は、子どもの社会性と情緒の育成に何よりも力を入れる必要があると強調して」おり、この報告書が公表された後、子どもの社会性と情緒の育成に注力する保育所や学校が増え始めたそうです。
子どもの社会性と情緒の育成に注力する保育所や学校が増えただけで、共感力をはじめとした社会情動的スキルが簡単に高まるとも思えませんが、そうした教育・保育の役割や重要性にはもっと目を向ける必要がありそうです。
日経の記事では、「この報告書が公表されたあと、子どもの社会性と情緒の育成に注力する保育所や学校が増え始め、多くの学校で社会性と情緒を育てるカリキュラムを採用した」ほか、「スウェーデンでの研究によると、以前は支配的で厳しい親が多かったが、最近は子どもを尊重し、子どもの感情に丁寧に辛抱強く向き合う親が多くなった」そうです。
なお、全米研究評議会と米国医学研究院の合同委員会の報告書について、インターネットや生成AIで調べてみたところ、非常に興味深い内容が見られたため、この報告書のポイントや日本の幼児教育・保育との関連については、改めて会員ページで取り上げる予定です。

