子どもの裸体撮影で不適切な対応が問題に
- 吉田正幸
- 8月27日
- 読了時間: 4分
園も町も信じがたいほどのお粗末な対応!
2か月ほど前のことになりますが、福島県浪江町の町立認定こども園で男児(2歳)に皮膚病の疑いを抱いた看護師が裸の姿を撮影し、非常勤の小児科医にメールで写真を送付しようとしたところ、誤って男児の母親に誤送信したという問題が発生しました。
驚いた母親が同園に伝えたところ、納得できるような説明がなされなかったため、苦情解決第三者委員を交えて苦情解決の話し合いがもたれ、そこで園側の様々な問題点や対応の不備が明らかになりました。
ここで詳細を述べる紙数はありませんが、大きな問題点としては次のようなものが挙げられます。
◇園児の裸体を撮影し、保護者や園長の許可なく第三者(医師)に送った
◇医師宛のメールを保護者に誤送信した
◇医師宛のメールには、看護師の記憶違いの情報(保護者の身なりと子どもの衛生状態の関連)が書かれていた
◇非常勤の医師は町との委託契約であり、園医が置かれていなかった
◇園という組織における連携・協力体制が不十分であった(ダブルチェック機能もない)
◇保護者に対するアカウンタビリティ(説明責任)が果たされていなかった
これらの問題点について、リスクマネジメントの観点からは、個人情報保護の問題、子どもの裸体撮影の問題、メール誤送信の問題、園医不在の問題、職員間の情報共有の問題、組織の役割分担・連携体制の問題、保護者とのコミュニケーションの問題などが指摘できます。
まず裸体の撮影に関しては、感染症の可能性も否定できない皮膚の病変を発見したとはいえ、襟足からおむつの上半分まで背中側を撮影する必要があったのかどうか。医師の相談する場合、せいぜい皮膚の病変と思われる患部の写真だけでよかったのではないかと思われます。
加えて、看護師が独断で医師にメールする前に、もっと言えば撮影する前に最低限でも園長の判断を仰ぐ必要がありました。同時に、保護者に連絡することも必要だったと考えられます。これは、組織体制や運営管理体制の不備と言わざるを得ません。
メールの誤送信についても、基本的に園のパソコンやタブレットを使うことを前提に(個人のものは使わない)、メールアドレス等のフォルダー管理を徹底しておくべきであったと思います。もっと言えば、個人情報を含む添付データ(写真)については、パスワードをかけて、事前と送信時に二重パスワードをかける必要がありました。
また、非常時や緊急時の様々な対応について、職員の連携・協力体制を整えておくとともに、必要な規定やマニュアル等を整備して、うまく活かせるよう、日頃から訓練しておくことが求められます。そうした体制が全く機能しなかったということです。
さらに、保護者に対する情報提供・共有や説明責任が十分に果たされていなかったことも大きな問題です。同園では、入園に際して例えば外用薬の使用やオンライン診療、医師の支援に係る情報共有などについて口頭で説明し、保護者のうなづきで同意を得たとしていますが、裸体の撮影までは想定していなかった可能性が高いようです。
何よりも、それ以前の問題として、本来であれば重要事項説明書を作成して、保護者に十分に説明し、同意を得て署名してもらうのが正しい対応です。
これに関しては、町行政のほうの意識にも大きな問題があります。今回の問題が生じた後、町担当課は「個人情報の第三者提供に関する同意書(案)」を示しましたが、そこに個人情報の提供先として、医療関係機関や福祉関係機関のほかに「外部業者(教材提供会社、写真館等を含む)」が挙げられています。外部業者を個人情報の提供先に含めるという感覚は、行政として極めてお粗末な意識だと言わざるを得ません。
このほか、認定こども園には学校医を置かなければならないと法令で定められているにもかかわらず、診療所の非常勤小児科医しか対応できない状況にあったことも論外です(その後、園医を委嘱することに)。
これらの杜撰な状況や対応を見る限り、起こるべくして起こった拙劣な事態と言えそうです。