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子育て世帯への住宅支援で初の全国調査へ

  • 執筆者の写真: 吉田正幸
    吉田正幸
  • 11 分前
  • 読了時間: 3分

住宅支援政策の充実は少子化対策にも有効か!


 こども家庭庁はこのほど、子育て世帯に配慮した住宅支援等の在り方について調査研究に乗り出すことになりました。どのような子育て世帯向けサービス等が導入されているか、賃貸住宅を中心に自治体からの支援の有無や自治体のまちづくりとの関連性など実態調査を実施し、具体的事例を把握するのが狙いです。そこで得られた成果が、今後の子育て世帯に対する住宅支援政策につながっていくか注目されます。

 この調査研究では、①賃貸住宅を中心に子育て世帯に配慮した住宅で行われているサービスや、それらに対する行政支援などの実態調査、②調査結果を踏まえて行政としてどのような支援が求められているか、どのような効果を期待できるかなどについて、ヒアリング等により検証、といったことが想定されています。

 これらの実態調査やヒアリング調査を通して、子育て世帯向けサービスの状況や自治体からの支援の有無、自治体のまちづくりとの関連性などを把握するとともに、各サービスによる子育て支援の効果や入居率、回転率等の経営実態も踏まえて、行政に対して今後どのような支援が求められるかについて検証する予定です。また、こうした調査・検証の検討に当たっては、住宅支援政策等に知見のある有識者や自治体職員などで構成する検討委員会を設置し、必要に応じて意見聴取したり、助言を求めることとしています。

 子育て世帯に関する住宅支援政策に関しては、昨年6月にOECD(経済開発協力機構)が公表した社会指標に関する報告書でも、様々な社会的側面が出生率の動向に及ぼす影響を分析し、主要な政策課題を明らかにした中で、住宅費の上昇が出生率に影響していることが指摘されています。

 それによると、「子どもを持つ(増える)ということは、多くの場合、より大きな家族を収容するためにより広い住宅スペースに移ることによって住宅支出が増加することを意味する」「住宅費の増加は、子どもを増やすための費用を高くする」と指摘。そのため、「住宅に対する家計支出の増加が合計特殊出生率に有意かつマイナスの影響を与えること」との研究結果も紹介しています。

 さらに、報告書では、「多くのOECD諸国で住宅価格や家賃が劇的に上昇しているため、20代や30代になっても経済的な理由から親と同居しなければならない若者が増え、パートナーシップや家族の形成が阻害されている可能性がある」と説明。「より手頃な賃貸住宅を利用できることで、若者が子供を持ちやすくなる。さらに、補助金や保証を通じて若者が住宅ローンや住宅所有にアクセスしやすくなれば、出生率にプラスの影響を与える可能性がある」と述べています。

 日本においても、賃貸や購入を問わず住宅費が急速に上昇しており、その負担が子育て家庭を圧迫している可能性があります。加えて、子どもの声や活動が騒音と捉えられないような構造的配慮も必要ですし、子どもや保護者が近隣で安心して遊べる環境も住宅整備と併せて求められます。

 今回の調査研究事業が、子育て世帯に配慮した住宅支援政策の充実につながる基礎資料となり、子ども・子育てにやさしいまちづくりの一環となることが期待されます。

 余談ながら、1995年度からの5年間に実施されたエンゼルプランは、文部・厚生・労働・建設省の4大臣合意で策定されましたが、その中で建設省関係として次のような施策が盛り込まれていました。

・良質なファミリー向け住宅の供給

・仕事と子育ての両立、家庭の団らんのためのゆとりある住生活の実現

・子どもの遊び場、安全な生活環境等の整備

 ただ、これらの施策がどのくらい実行に移され、成果を上げたかについては、その検証がなされていないため、残念ながら詳しく分かっていません。

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