保育の質の向上につながる第三者評価の改善へ!
- 吉田正幸
- 11 分前
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評価スケールを使って保育実践の改善・見直しを
子ども家庭庁の来年度概算要求がまとまりましたが、この中で新規事業として「保育所等における第三者評価改善モデル事業」2000万円が盛り込まれています。保育の質の向上に対する期待や関心が高まる一方で、エビデンスベースで質の向上につながる有効な手立てはほとんどなかっただけに、この事業によってどこまで保育現場における実践的な質の向上が図られるか注目されます。
第三者評価については、これまでも保育所等において実施されてきましたが、必ずしも保育に質の向上につながったとは言えず、受審率も低かったのが実情です。しかも、保育所と幼稚園で評価に関する取り組み方が異なっていて、保育所は自己評価が努力義務、第三者評価が努力義務であるのに対して、幼稚園は自己評価が義務、学校関係者評価が努力義務となっています。認定こども園は、その折衷的な形にとどまっており、固有の評価システムは国レベルで存在しません。
今回の事業は、「新たに、保育所等の第三者評価を改善するモデル事業を開始して、保育実践の見直し・改善につながる質の向上の取組を推進」するのが狙いです。具体的には、都道府県等の自治体からモデル地域を指定して、3年程度継続的に事業に取り組んでもらい、国内の質評価スケール等を活用した第三者評価の実施や、評価を活用した保育実践の見直し・改善、保育士等や評価者の育成などについて、モデル開発を行うというものです。
評価スケールとしては、欧米等を中心に一定の実績があるECERS-R、ECERS -E、ECERS-3 、SSTEW、CLASSなどがありますが、ほかにも国立教育政策研究所幼児教育研究センターが開発した「幼児教育における保育実践の質評価スケール案」などがあり、どのスケールをどう活用するかもポイントになりそうです。
同庁が示した資料によると、主な調査研究の観点(例)として、「実施体制、評価機関の認証」「実施園へのフィードバック、保育の改善」「自己評価との関連付け」「評価の公表」「監査との役割分担」「評価者の育成」などが挙げられています。
対象施設については、保育所や認定こども園、地域型保育事業などが想定されており、文科省所管の幼稚園は別として、保育所と認定こども園が同じ第三者評価に取り組むことになります。
事業の進め方については、3段階で取り組むこととしており、フェーズ1 では評価者の育成や、質評価スケールによる第三者評価の試行的実施、フェーズ2ではフェーズ1の取り組みの検証とそれを踏まえた見直し、フェーズ1での実施園のフォロー、フェーズ3ではフェーズ2までの取り組みの継続と、調査研究全体の検証という流れが想定されています。
同庁では、これらのモデル的な取り組みを通して、「第三者評価を通じた保育の質の向上を実効的に推進」したい考えです。