8時間・11時間の“台形”問題の解決に迫れるか?
- 吉田正幸

- 9月5日
- 読了時間: 3分
朝夕やシフト、ノンコンタクトタイムを考慮した職員配置を
こども家庭庁が今年度に実施する調査研究事業には、いろいろ注目すべきものがあります。その中で今回は、「延長保育及び夜間保育を含めた保育利用時間等の実態及び早朝・夜間・休日等を含めた保育ニーズの把握に関する調査研究」を取り上げてみます。
1日最大11時間まで受け入れできる保育標準時間や最大8時間までの保育短時間、さらには延長保育や夜間保育など、法令上・制度上・財政措置上の保育時間の区分はありましたが、実際に子どもたちがどのくらい在園しているのか、保育利用時間の実態を把握することができれば、長年の懸案であった「8時間保育」「11時間開所」によってもたらされる園児数と保育者配置の関係を改善できる可能性が出てきます。
これは、いわゆる“台形”問題と言われるものです。要は登降園時間を含む早朝・夕方における園児数のカウントの仕方が必ずしも合理的ではなく、保育現場に負荷をかけている可能性があるということです。その実態が明らかになれば、保育者の配置の在り方や公定価格上の財政措置の在り方などを見直す契機になると考えられます。
その意味で、今回の調査研究事業が、「8時間・11時間の台形問題」にどこまでアプローチしてくれるかどうか、大いに注目したいと思います。
保育者の配置と財政措置については、職員配置基準を基本としつつ、公定価格上の人件費は設備運営基準上必要とされる保育士の数で算定されています。その場合、問題となるのが「8時間保育」「11時間開所」によってもたらされる園児数と保育者数の関係です。
国の考えでは現在、標準的な保育時間である8時間の前後に開所時間の保育時間があり、この時間(11時間-8時間=3時間)は徐々に登園する園児が増えていき、降園する園児が減っていくため、その時間帯の保育者は8時間の時間帯の半分になるという前提で配置保育者数を算定しています。
けれども、標準的な保育時間である8時間の前後の3時間について、園児が標準的な保育時間の半分しかいないという具体的な根拠はありません。この3時間には登降園時間が含まれますので、全園児が揃っているわけではありませんが、半数程度であるかどうかは分かりません。近年の保育利用を考えると、長時間化してきている傾向もあるだけに、3時間部分の園児が増えている可能性も否定できません。
また、早番、遅番といった保育者のシフトを考えると、職員が切れ目なく瞬時に交代しているわけではなく、重なりの部分(バッファ)があるはずです。しかも、その必要性が強調されるようになってきたノンコンタクトタイムを確保することを考えれば、運営基準上の保育士はもとより公定価格上の保育士でも不足することは自明です。
これらの状況を勘案すれば、保育者の業務負担の軽減やノンコンタクトタイムの確保という観点から、ひいては保育人材の確保という観点からも、配置すべき職員数のカウントの仕方を見直す時期に来ているのではないでしょうか。今回の調査研究事業が、「8時間・11時間の台形問題」を解消するきっかけになるかどうか注目したいと思います。

