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「年収の壁」対策はどこまで実効性があるのか?


 

保育人材の確保につながるかどうかは未知数


 賃上げしやすい環境整備の一環として、政府は今年10月から、当面の対応として「年収の壁」対策が講じられることになりました。年収106万円や130万円という収入を超えると、社会保険料を支払う必要が生じたり、配偶者控除の適用を受けられなくなることから、その金額を超えないよう働くことを控えるという「年収の壁」を克服しよとするものです。

 とはいえ、保育人材の確保・定着に悩む保育所や認定こども園、幼稚園等にとっては、果たしてどこまで有効な対策となるのか、事業者側の積極的な対応も求められるだけに、その成否はまだ分かりません。

 今回の対策としては、「年収の壁・支援強化パッケージ」として、次の2つを実施することになりました。

◇106万円の壁(厚生年金・健康保険)対策:キャリアアップ助成金のメニューを新設することにより、パートやアルバイトで働く人が社会保険に加入する場合、手取り収入の減少を意識せず働くことができるよう、労働者の収入を増加させる取組を行う企業に対して、労働者1人当たり最大50万円の支援を行う。

◇130万円の壁(国民年金・国民健康保険)対策:被用者保険の適用拡大を推進するとともに被扶養者認定の円滑化を図り、パートやアルバイトで働く人が繁忙期に労働時間を延ばすなどして収入が一時的に上がったとしても、事業主がその旨を証明すれば引き続き被扶養者認定を可能とする。

 最低賃金の引き上げもあって、パート職員の時給が上がれば、これまでと同じ労働時間であっても「年収の壁」に突き当たってしまい、労働時間を短くしようという動きが出てくる可能性があります。なぜならば、「年収の壁」を超えてしまうと、社会保険料の負担が発生してしまい、結果として手取り収入が減ってしまうことになるからです。

 今回の対応は、この「年収の壁」がもたらすデメリットを減らそうというものですが、事業主側の積極的な対応が求められるだけに、どこまで実効性が上がるかは未定です。

 例えば、「106万円の壁」への対応としては、労働者本人に社会保険料負担が生じた場合、事業主は保険料相当額の手当(=社会保険適用促進手当、賃金の15%以上など)を支給したり、所定労働時間の延長によって賃金を増額したりする必要があります。労働者1人当たり最大50万円の支援があるものの、社会保険料負担(手当+事業主負担)や賃金の増額だけでなく事務負担なども増えるため、施設側の負荷は増すと考えられます。

 今回の「年収の壁」対策が、保育分野においても成果を生むかどうか、実際の対応例を収集しながら、丁寧に検証することが求められます。

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