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「新たな少子化対策元年?」

 我が国の少子化対策の始まりは、1989年の合計特殊出生率が1.57と、それまでの過去最低であった1966年(丙午)の1.58をも下回り、それが公表された1990年に「1.57ショック」と言われたことに端を発しています。


 

 岸田首相が1月4日の伊勢神宮参拝後に行った年頭記者会見で、少子化対策を大きく取り上げたことが話題を呼んでいます。さらに同日、小池東京都知事が職員に対して行った新年あいさつのなかで、18歳未満のすべての子どもに現金給付を行うことを明言し、これも大きな話題となりました。


 奇しくも仕事始めとなった同じ日に、昨年1年間の出生数が80万人を下回ると予想されるなか、岸田首相が「異次元の少子化対策」、小池都知事が「大胆な取り組み」を標榜し、遅まきながら少子化対策に本腰を入れたい意向を示しました。これは、もはや後がないという意味での少子化対策元年と言っていいかもしれません。


 我が国の少子化対策の始まりは、1989年の合計特殊出生率が1.57と、それまでの過去最低であった1966年(丙午)の1.58をも下回り、それが公表された1990年に「1.57ショック」と言われたことに端を発しています。その後、最初の少子化対策として1994年12月にエンゼルプランと緊急保育対策等5か年事業が策定され、それ以降も新エンゼルプランや少子化対策プラスワン、子ども・子育て応援プラン、子ども・子育てビジョン、子育て安心プランなど、そして現在の新子育て安心プランへと続いています。


 しかし、これらの少子化対策を講じても少子化の流れに歯止めをかけることは叶わず、合計特殊出生率1.57を記録した1989年の約125万人から2021年の約81万人へと、むしろ少子化が加速しつつあります。これは、我が国の将来推計人口の中位推計と比べると、10年ほど早まっている計算になります。


 こうしたことへの危機感の表れが、国のトップと自治体のトップによる異例の挨拶につながったと思われます。岸田首相は、「先送りできない問題への挑戦を続けていく」として、「異次元の少子化対策に挑戦する」ことを表明。「本年4月に発足するこども家庭庁の下で、今の社会において必要とされるこども政策を体系的に取りまとめた上で、6月の骨太方針までに将来的なこども予算倍増に向けた大枠を提示していく」ことを改めて力説しました。


さらに、「こども家庭庁の発足まで議論の開始を待つことはできない」として、

  1. 児童手当を中心に経済的支援を強化

  2. 学童保育や病児保育を含め、幼児教育や保育サービスの量・質両面からの強化を進めるとともに、伴走型支援、産後ケア、一時預かりなど、全ての子育て家庭を対象としたサービスを拡充

  3. 働き方改革の推進とそれを支える制度を充実

という3点を強調しました。


一方、小池知事は、「現状はもはや一刻の猶予も許されない。だからこそ、都が先駆けて具体的な対策を充実させていかなければならない」として、「0~18歳の子供に対して、月5千円程度を念頭に育ちを切れ目なくサポートする給付を行うなど、大胆な取組も考える」ことを明らかにしました。


 国や自治体のトップが、新年の挨拶でここまで踏み込んだ発言をすることは異例です。そこまで少子化が深刻化していることの裏返しと考えられます。とはいえ、岸田首相の言う児童手当も、小池都知事の言う月5千円程度の給付も、いくら金額や対象を拡充したとしても、現金給付そのものに少子化の流れを押しとどめる力があるとは考えられません。なぜならば、少子化の最も大きな要因は未婚化・非婚化の増加であり、子育て家庭への現金給付はこのボトルネックの解消にはさほど役に立たないからです。


 現金給付も含めた総合的な対策の必要性はありますが、少子化のボトルネックの解消をはじめとした対策の優先順位を明確にして、それに必要な財源を十分に確保した上で、それぞれの対策がどのような成果につながるかの見通しを明らかにすることが、何よりも重要だと考えられます。翻って、国や自治体による「異次元」あるいは「大胆な」取り組みが、新たな少子化対策元年を象徴するものになるのかどうか、今後の動向を注視したいと思います。

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