処遇改善の実効性は担保できるのか?
- 吉田正幸
- 1 日前
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骨太の方針で保育人材確保こそ謳われたものの…
政府の経済財政諮問会議はこのほど、経済財政運営と改革の基本方針2025(原案)をとりまとめました。この中で、保育人材の確保については、「公定価格の引上げを始めとする処遇改善」「保育士・幼稚園教諭等の処遇改善、保育士配置の改善」「保育現場の負担軽減や改正児童福祉法に基づく保育人材の確保等」などが盛り込まれ、保育者の処遇改善や配置改善も重要な課題であることが示されました。ただ、こうした文言こそ並んだものの、そのための具体的な道筋は示されておらず、どこまで実効性が担保されるのか課題を残しました。
今回の経済財政運営と改革の基本方針2025(原案)、いわゆる骨太の方針2025は①賃上げを起点とした成長型経済の実現、②中長期的に持続可能な経済社会の実現の2つを柱に構成され、そのいずれにおいても人材確保に向けた処遇改善が盛り込まれています。
さらに、令和8年度予算編成に向けた考え方として、少子化対策・こども政策を含む重要政策課題については、「必要な予算措置を講ずることによって、メリハリの効いた予算編成とする」と明記し、こども・保育分野においても一定の財源を確保する姿勢を示しています。
とはいえ、平均10.7%の処遇改善を行った公定価格(基本分単価)の見直しは、人事院勧告に準拠したものであり、政策的に簡単に増やせるものではありません。処遇改善を図るとすれば、今回一本化された処遇改善等加算を引き上げるしかないのですが、昨今の諸物価高騰や厳しい財政状況などを勘案すれば、それほど簡単に処遇改善が図られるとは考えられません。
一方、保育関係の財源に目を向けると、人材確保関係では処遇改善に加えて職員配置の改善も重要な課題であり、これにも相当な財源が必要となります。来年度から本格実施される「こども誰でも通園制度」にも、相当な財源が必要になると考えられます。こうした状況において、処遇改善に向けた財源をどう確保するのか、どのような手法で改善を図るのか、詰めの議論を積極的に行うことが期待されます。
なお、骨太の方針2025(原案)に盛り込まれた保育関係(人材確保・処遇改善)の記述は以下の通りです。
◇医療・介護・保育・福祉等の人材確保に向けて、保険料負担の抑制努力を継続しつつ、公定価格の引上げを始めとする処遇改善を進める。
◇具体的には、保育士・幼稚園教諭等の処遇改善、保育士配置の改善、こども誰でも通園制度の全国展開や、放課後児童対策、子育て世帯への住宅支援に取り組むとともに、施策全般について出生率やこどものWell-beingに関する指標等関連指標に与える効果の検証を徹底し、より効果的な施策への重点化など施策の見直しを検討する。
◇「はじめの100か月の育ちビジョン」に基づく幼児期までの育ちの質の向上、「こどもの居場所づくりに関する指針」に基づく支援、保育現場の負担軽減や改正児童福祉法に基づく保育人材の確保等を進める。
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