デンマークの保育施設の質が明らかに
- 吉田正幸
- 23 時間前
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質へのアプローチが浮き彫りにした課題
デンマークのEVA(The Danish Evaluation Institute、デンマーク国立評価研究所)とVIVE(The Danish Center for Social Science Research、国立福祉研究分析センター)は子ども・教育省の委託を受けて、3~5歳児を対象とした公立保育施設の質を調査し、報告書を取りまとめています。 報告書そのものは昨春に公表されたものですが、日本においても保育の質や評価スケールの活用に関する関心が高まりつつあるため、ここで改めて報告書のポイントを整理してお伝えしておきます。
調査は、公立保育施設100か所(クラス数185)を抽出し、教育的学習環境の質についてはKIDSと呼ばれる評価スケール(観察ツール)を用いて、人間関係や遊びと活動、物理的環境という3つの基本領域に焦点を当てて評価しています。
その結果、「卓越している」「良い」「十分である「不十分である」「極めて低い」という5つの品質カテゴリーで捉えると、総合的な評価として「卓越している」または「極めて低い」と評価されたところはゼロで、「良い」が 9%、「十分である」が63%、「不十分である」が28%となっていました。
これについて報告書では、「全体として、9割のクラスが『十分』またはそれ以下の評価となっており、家庭環境などの理由で特別なケアや発達の機会を必要としている『脆弱な立場にある子どもたち』に対して、その格差を補償するような質の高いケアを提供できているとは言えない現状が明らかになった」としています。
分野別の結果をみると、関係性については、「良い」が20%、「十分」が45%、「不十分」が35%となっており、保育者と子ども個人の関わり(温かい出迎えやコミュニケーション)は比較的高く評価されたものの、「半数のクラスで職員が子どもの意図を無視した『叱責や咎め』を頻繁に行っていることが観察された」としています。さらに、保育者の関与による「子ども同士の友達づくりやコミュニティ形成への支援は最も低い評価」になったとしています。
遊びと活動については、「良い」が10%、「十分」が50%、「不十分」が40%となっており、「職員が主導するアクティビティ(読み聞かせ、リトミックなど)は年齢に適しており、高く評価された」一方で、「子どもが自発的に行う『自由な遊び』へのサポートは非常に限定的」であったとしています。そのため、「遊びをさらに発展させるための提案や道具の提供、遊びの輪に入れない子どもへのアプローチが課題となっている」と指摘しています。
脆弱な立場にある子どもたちに関しては、「活動や遊びへの参加を促す教育的配慮は全体的に低く評価され」、職員へのインタビューでは、「十分なリソース(人員)がない」「専門的なスキルが不足している」「専門機関からの直接的なサポートが減り、助言だけになった」といった構造的な課題を挙げています。
こうした調査結果について、報告書では、「デンマークの子どもたちが経験する幼児教育の質には、施設や属するクラスによって非常に大きな格差がある、という事実を浮き彫りにした」と 捉えています。
そこで報告書は、「幼児教育の質を向上させ、すべての子どもたち(特に格差の影響を受けやすい脆弱な環境にある子どもたち)の発達を等しく支えるため」には、次のような取り組みと投資が自治体および国家レベルで必要だとしています。
○手厚い支援が必要な施設への重点投資
○人員リソースの確保(欠勤・離職対策と、1日のうちの人員配置の適正化)
○職員の教育的コンピテンシー(特に遊びのサポートや関係性構築)の向上と専門開発
○現場における強力な「教育的リーダーシップ」の確立
○評価文化の定着(計画から実際の教育実践への移行)
なお、調査対象となった保育施設の平均的なプロファイル (2024年)は以下の通りです。日本と比べると非常に興味深い結果がみられます。
◇平均在籍児童数:3〜5歳児が52名(1クラスあたり平均19.6名)
◇職員の構成:ペダゴー(国家資格を持つ保育専門職)48%、保育助手34%、教育アシスタント7%、リーダー8%、実習生3%。
◇年間平均配置基準: 職員1人あたり児童5.9名(資格保有ペダゴー1人当たりでは12.3名)
◇職員の平均勤続年数:5.6年
◇年間職員離職率:平均30%(高い流動性)。
◇年間病気等欠勤率:9.2%
◇1日の中での人員配置の変動(時間帯の課題)
(観察日において、職員1人あたりの子ども数は時間帯によって大きく変動していた)
朝(8:30):6.4名、午前(11:00):5.4名、昼(12:30):11.8名、午後(15:25):5.5名。
昼の時間帯は配置基準が最も悪化し、一部のクラスでは職員1人で20名以上の子どもを見る状態になっていました。これは職員の休憩や会議が重なるため。この時間帯に校庭でのトラブルや子どもの孤独が見落とされやすいと職員も指摘しています。
