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地方自治体に突きつけられる持続可能性への挑戦


 

消滅可能性より持続可能性を重視した対策を!


 民間の有識者らでつくる人口戦略会議(議長=三村明夫・前日本商工会議所会頭)は4月24日、「令和6年・地方自治体「持続可能性」分析レポート―新たな地域別将来推計人口から分かる自治体の実情と課題―」を発表しました。

 このレポートは、最新の「日本の地域別将来推計人口(令和5 年推計)」に基づいて、人口から捉えた全国の地方自治体の持続可能性について分析を行ったものです。ちょうど10年前に発表された日本創成会議の「消滅可能性都市」リストを踏まえながら、人口の「自然減対策」(出生率の向上)と「社会減対策」(人口流出の是正)の両面から分析しているのが特徴です。

 それによると、新たな分析手法として、「A 自立持続可能性自治体」「B ブラックホール型自治体(B-1、B-2)」「C 消滅可能性自治体(C-1、C-2、C-3)」「その他の自治体(D-1、D-2、D-3)」という9つの分類を設定し、それぞれの状況に応じた対策の必要性を明らかにしています。

 分類の基準は、人口の流出入が起こると仮定した場合の若年女性人口の減少率を縦軸、人口の流出入がないと仮定した場合の若年女性人口の減少率を横軸にとって、それぞれの減少率が20%未満、20~50%未満、50%以上という3つのレベルで自治体を分類しています。

 ちなみに、各自治体において人口移動(人口の流出入)がなく、自治体内の出生数と死亡数だけで人口が変動すると仮定した場合の人口を「封鎖人口」と言います。

 9つに分類した結果、「自立持続可能性自治体」であるAが65、「ブラックホール型自治体」であるB-1が18、B-2が7、「消滅可能性自治体」であるC-1が176、C-2が545、C-3が23、「その他の自治体」であるD-1が121、D-2が260、D-3が514となりました。

 それに対して、人口流出が大きく見込まれる場合は社会減対策、人口流出を仮定しなくても若年女性人口の減少率が大きいと見られる場合は自然減対策がより必要になるとの考えを示しています。平たく言えば、人口流出によって若年女性人口が大幅に減少すると考えられる自治体は、社会減対策、すなわち若い女性が他の自治体に出て行かないような対策がより重要だということです。一方で、「封鎖人口」と仮定して若年女性人口が大幅に減少すると考えられる自治体は、地域の出生率が非常に低いと考えられるため、自然減対策、すなわち出生率の向上を図る対策が重要な課題だと考えられます。

 要するに、人口減少の地域特性を十分に踏まえた上で、より有効な対策を講じることが求められるということであり、その最大のポイントが若年女性人口の動向にあるということです。新聞やテレビ等のマスコミの多くは、「消滅可能性自治体」という言葉に焦点を当てて論じていて、「消滅」というインパクトの強い言葉が一人歩きしている観がありますが、大事な観点は「いかに消滅しないか」ではなく、「いかに持続可能性を高まるか」だと言えます。

 個々の自治体が「消滅しない」ために人口の奪い合いをするのではなく、それぞれが地域特性を生かして「持続可能である」ような政策や対策を高じることが大切です。部分最適ではなく全体最適を目指すことができるかどうか、そこが人口減少対策の分かれ目になるのではないでしょうか。


*会員ページの「情報データベース」の「その他」に『全国1729自治体の持続可能性分析結果リスト』を載せています。(PDFデータを拡大してご覧ください)




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