総務省の公適債を活用し公立保育所等の統廃合を
- 吉田正幸
- 5 分前
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統廃合による財政効果以上に新たな機能の創造がカギ
総務省が創設した公共施設等適正管理推進事業を活用して、公立保育所等の再編・統廃合に取り組む地方自治体があります。同事業は、自治体の財政が厳しい状況にある中長期的な視点で施設の更新・統廃合・長寿命化などに取り組めるよう、公共施設等適正管理推進事業債による取り組みを推進するというものです。
人口減少に悩む地方自治体では、公共施設の余剰問題を抱え、その統廃合が大きな課題となっています。かといって、単純に施設をなくしてしまうと、そこで発揮していた機能がなくなり、地域の人口減少に拍車がかかる可能性もあります。しかも、施設を廃止して統廃合を行うにも費用がかかるため、財政力の乏しい自治体にとっては、前に進む(施設を統廃合する)のも困難、後ろに進む(施設を維持する)のも困難という厳しい状況にあります。
そこで、資金調達のための手法の一つとして、総務省は「公共施設等適正管理推進事業債(公適債)」を2022年度からが創設しています。この公適債は、地方自治体に対する単なる財政支援ではなく、新しい発想による機能の強化を目指すことも期待されています。今年度の財政規模は約5000億円に上ります。
保育関係の活用例としては、岐阜県北方町がゼロ歳から15歳までの教育を掲げて、中学校1校、小学校3校を小中一貫の義務教育学校「北学園」「南学園」の2校に集約するとともに、町立幼稚園を幼保連携型認定こども園に変え、北学園の敷地内に設置したケースがあります(2023年度)。
公適債が求める集約化・複合化事業の一貫として、義務教育学校と認定こども園との相互交流などで接続を強化し、義務教育学校も9年間を3部制にして小中の垣根を低くするなど、教育の充実と維持管理コストの低減を図っています。
また、三重県明和町では、昨年4月に小学校3校を統合して明和北小学校を開校し、近隣にある中学校と連携して一体的な教育に取り組んでいます。そこに、新たに認定こども園も併設することによって、教員同士の連絡を密にし、小1プロブレムなど進学に伴う子どもの不安を和らげる効果を期待しています。
これらの統廃合は、単なる財政の圧縮や効率化を図るだけではなく、新しい発想によって機能の強化を目指すところにポイントがあります。
同事業債の元利償還金に対する交付税措置率は取り組む事業によって異なりますが、統廃合を含む集約化・複合化事業の場合、交付税措置率は50%に及びます。ただ、同事業の期間は来年度までと短いため、期待される成果を上げたかどうかは検証できていません。
それだけに、同事業の期間延長あるいは新たな事業としての拡充が期待されると同時に、自治体にとって単なる財政の圧縮を図るだけではなく、新たな機能強化につなげられるか、知恵と努力が問われそうです。
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