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“こどもまんなか”が見えない各党の公約

  • 執筆者の写真: 吉田正幸
    吉田正幸
  • 7月7日
  • 読了時間: 3分

量的な少子化対策しか捉えていない政治の限界か?


 今月20日に投開票が行われる参議院議員選挙に向けて、各政党の公約がほぼ出揃いました。子ども・子育てや保育、少子化対策という観点からみると、残念ながらどの党も物足りなさを感じるのが実情です。少なくとも“こどもまんなか”を目指す強い意欲を示した公約はありませんでした。

 ここでは、紙数の関係もあるので、各党の詳しい公約内容を取り上げることはしませんが、全体として言えば、子ども・子育てや保育に関する記述は少なく、少子化対策を正面から捉える政策もほとんど見られませんでした。

 目の前に差し迫った参院選ということなので、どうしても有権者の関心の高い“美味しい話”が中心になるのは分かりますが、大袈裟に言えば国・地方の存亡がかかった少子化対策について、政策的な主張や提言がなされていないのはいかがなものでしょうか。

 保育や子育て支援に関しても、現金給付や児童手当等の拡充、教育・保育の無償化といった経済的支援ばかりが目につきます。

 保育を取り上げたものとしては、「こども誰でも通園制度の本格実施」(自民党、立憲民主党、公明党、共産党)や「職員配置の改善」(自民党、公明党、共産党)、「処遇改善」(自民党、公明党、共産党、立憲民主党)、「施設型給付の引き上げ」(公明党)、「保育の質の向上」(公明党)、「3歳からの義務教育化」(国民民主党)、「公立保育所に対する新たな財政支援制度の創設」(共産党)といったものです。

 少子化対策に関しては、この問題を正面から取り上げて骨太の政策を示した政党はありませんでした。直近の参院選のテーマになりにくいのは分かりますが、我が国の社会保障制度や社会経済に大きな影響を及ぼす重要課題であるだけに、どの党も公約で踏み込まなかったのは残念です。

 子育て世帯に焦点を当てた現金給付や児童手当の拡充、保育の無償化など、幅広く解釈すれば、これらも少子化対策の一環ではあるでしょう。職員配置の改善や処遇の改善も、保育の質につながる大切な政策課題ではあります。

 しかし、これらの公約から見え隠れする政策の方向性は、少子化のトレンドにブレーキをかけるという量的な少子化対策の域を出ません。未来の日本や地域社会の支え手、担い手となる子どもの健やかな育ちを保障することこそが、質的な少子化対策として最も重要なテーマだと筆者は考えているのですが、今回の参院選の各党公約からは子どもを主語にした政策が全く見えてきません。

 “こどもまんなか”が単なるキャッチフレーズではなく、これからの子ども・子育て政策や保育政策の哲学・理念であってほしいと切に願います。

 

*このトピックス(参院選の選挙公約から見えてきた課題)に関しては、近日中にメルマガでも取り上げる予定です。

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