top of page

ポイントは遊びを通した学びの保障

  • 執筆者の写真: 吉田正幸
    吉田正幸
  • 9月21日
  • 読了時間: 4分

幼稚園教育要領改訂にどう反映されるのか?


 文部科学省の中央教育審議会教育課程企画特別部会がこのほど開かれ、そこで示された論点整理(案)の中で、幼稚園教育要領改訂に向けた方向性と論点が明らかにされています。その中で、「幼児教育における遊びの中での直接的・具体的な体験を通した学び」の重要性が強調されるとともに、それによって客観的・抽象的な認識や思考が発達していくとともに、小学校以降の生活や学習の基盤となることを説いています。

 こうした考えの背景には、幼児の遊びや生活に関して、次のような現状や課題、問題があると指摘しています。

〇意図的に用意しなければ、幼児の発達に必要な、様々な人やものと直接的・具体的に関わる体験を十分に確保することが困難になっている

〇一部の幼児教育施設においては、幼児の興味・関心ではなく、SNS等からの偏った情報やそれらに影響を受けた一部の保護者のニーズを優先するなどし、幼児の発達にふさわしくない教育活動が行われているとの指摘がある

 これに関しては、「今後の幼児教育の教育課程、指導、評価等の 在り方に関する有識者検討会」が昨年10月に取りまとめた最終報告においても、次のように指摘していました。

□一部の幼児教育施設においてはSNSなどからの偏った情報やそれらに影響を受けた一部の保護者のニーズなどを優先し、ややもすると、文字や数量の機械的暗記や一方的指導など幼児の発達にふさわしくない教育活動が行われていたり、保護者をはじめ社会においては、幼児教育施設はただ遊ばせていたりするだけとの誤解もあるとの課題が指摘された

□今後、更に少子化が進行するとともに幼児に対する保護者の期待が過熱化し、それに応える幼児教育施設の競争が激化することにより、幼児教育の基本からみて必ずしも適切とは言えない教育が行われていくことが危惧されている

 そこで、教育要領改訂に向けた方向性と論点として、「直接的・具体的な体験の一層の充実」「幼児教育と小学校教育との円滑な接続」の推進の2つを挙げ、そのための体制づくりの推進に向けては「地方自治体における支援体制の充実・強化」を挙げています。

 このうち、「直接的・具体的な体験の一層の充実」については、遊びの中での直接的・具体的な体験、言い換えると「心と体が動く体験」を重視し、幼稚園はもとより認定こども園、保育所等の幼児教育施設においても、「幼児の自発的な活動としての遊びを通して資質・能力が育まれるよう、様々な人やものと直接的・具体的に関わる体験を一層充実する方向性で検討すべき」だと説いています。

 また、幼児の自発的な活動としての遊びを通した学びが、小学校以降の生活や学習の基盤となるとして、幼児の自発的な活動について具体的なイメージをいくつか示しながら、「自らの興味や関心から発した直接的で具体的な体験から、幼児は、幼児なりのやり方で、自分の生きる世界について学び、様々な力を獲得していく」というプロセスを示しています。

 ただ、「論点整理(案)」に示された今後の幼児教育に関する方向性と論点に関して、具体的な方策として以下の2点が示されていますが、幼児教育の在り方そのものよりも幼児教育と小学校教育との円滑な接続に比重が置かれている印象を受けます。

 幼保小の接続そのものは大切なテーマではありますが、「直接的・具体的な体験の一層の充実」「心と体が動く体験」を教育要領でどう表現し、幼児教育施設の教育にどう活かすのかについて、具体的な方策は示されていません。

◇子供の資質・能力を育む学びの連続性を明確にするため、幼稚園教育要領等においても、学習指導要領との連続性を表形式やデジタルを活用して示していくべき

◇子供それぞれの興味・関心や一人一人の個性に応じた多様で質の高い学びを引き出す観点から、幼児教育の「環境を通して行う教育」と小学校以降の授業改善の取組について相互理解が図られるよう、幼小中高の指導方法の趣旨の一貫性を明確にすべき

bottom of page