保育園の売却が当たり前の時代に?

問われる事業譲渡(M&A)の意義や目的
先日、Facebookの画面を開いたら、『保育園を売却しませんか?』という文字が目に飛び込んできました。仕事柄、目と頭が「保育」や「幼児教育」「子ども」という言葉にすぐ反応するのですが、「保育園」「売却」という言葉にはさすがに驚きました。
保育園などの事業譲渡、いわゆるM&Aは決して珍しいものでもありませんし、人口減少地域が拡大していくにつれ、徐々にM&Aも増えていくと予想されています。しかし、FacebookというメジャーなSNSで、ここまであからさまに保育園の売却を呼びかける広告が掲載されるとは思っていませんでした。
この広告を出しているのは、三井住友トラストグループの株式会社経営承継支援という会社で、文科省等の中央官庁もある霞が関コモンゲートにオフィスを構えています。「着手金・月額報酬一切なし」とあり、サイトにサクセスしてみると、「大手仲介会社の1/4!」「最低報酬額500万円~」「保育園 幼稚園 認定こども園 認可外保育園」といった文句が並んでいます。
これを見た率直な第一印象は、「ああ、そんな時代になったんだな」というものでした。と同時に、「最低報酬額500万円~」という仲介手数料の高さでした。こうした表現の場合、都市部であれば1000万円台の手数料を優に超える可能性が考えられます。
ちなみに、こども家庭庁の令和7年度調査研究事業の一環として、「保育所等の合併・事業譲渡等に関する実態調査」事業が行われ、その中で仲介手数料についても調査しています。それによると、「仲介業者があった」と回答した38件のうち、仲介手数料の金額は「500万円以上1000万円未満」が11件と一番多く、次いで「1000万円以上」と「手数料はなかった」が各5件、「200万円以上500万円未満」が4件、「50万円以上100万円未満」が1件となっていました。
この調査結果からみると、「最低報酬額500万円」というのは必ずしも安い手数料とは言えません。いや、安いとか高いとか言う以前の問題として、事業譲渡(正確には譲り渡す事業譲渡と譲り受ける事業譲受)は誰のために何のために行うのか、という本来の趣旨や意義、目的が問われなければなりません。
調査では、仲介業者を利用したことでメリットを感じたかを聞いたところ、「わからない」が19件(50%)、「メリットを感じた」が14件(37%)、「メリットは感じなかった」が2件(5%)でした。手数料金額とのクロス集計が行われていないため、正確なところは分かりませんが、「保育」という他の業種とは異なる特性を持つ事業の場合、経済的・財政的なメリット以上に公益的な役割があるということをしっかり押さえておくことが大切ではないでしょうか。
なお、上述した「保育所等の合併・事業譲渡等に関する実態調査」事業については、保育団体の幹部や自治体担当者らで構成する検討委員会(弊研究所の吉田が座長)を設けて検討を重ね、実態調査結果をまとめるとともに、「保育所等の合併・事業譲渡等に関するガイドライン」をまとめています。
この件について関心のある方は、こども家庭庁の次のアドレスから報告書やガイドラインをダウンロードすることができます。

