山梨県が少子化要因を市町村レベルで見える化!
- 吉田正幸
- 6 日前
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地域力を向上させるためのデータに基づいた“処方箋”を提示
全国でも珍しい人口減少危機対策本部を設置している山梨県はこのほど、少子化の要因を分析した上で、市町村ごとの特性を見える化し、課題と改善方策を「処方箋」として示した報告書「未来幸路 to the future 2025」をとりまとめました。
これは、同本部が中心となって、山崎史郎・内閣官房参与や国立社会保障・人口問題研究所、大学研究者等の専門家と連携しながら少子化対策調査研究プロジェクトに取り組んだもので、自治体としては例のない先進的な取り組みと言えます。
今回まとめられた報告書は、「地域力向上」に焦点を当てながら、「県内27市町村の出生動向を俯瞰し、結婚や出産の各段階においてどこに壁があるのかを統計的に可視化するとともに、雇用・住宅・保育等、25の社会経済指標との関連を分析」しています。
その目的は、「県内 27 市町村の合計特殊出生率に影響を及ぼす地域特 性をデータに基づいて可視化し、市町村が自らの強みと課題を客観的に把握で きる資料を整えること」であり、それによって「客観的なデータに基づく改善方策を『処方箋』として提示する」ことにあります。
報告書によると、少子化の主要因である未婚化・晩婚化の動向については、全国と同県とで大きな差異はなく、同じような傾向で推移しています。ただ、コロナ禍を別として、近年の社会減少(都市部への人口流出)と自然減少によって人口減少が進行しており、そこに市町村による人口移動の違いが反映していることが明らかにされています。
また、有配偶率と有配偶出生率についても、市町村によってともにプラス、ともにマイナス、どちらかがプラスで、どちらかがマイナスといったように、市町村による差が多くみられています。そのため、それぞれの市町村の状況の違いを明らかにすることにより、少子化対策に向けてどのようにアプローチすれ ばいいのかについての指針を得ることができるとしています。
一方、報告書は、地域力を「地域の働く力」「地域のにぎわい力」「地域の移住・定住 力」「地域の子育て基盤力」「地域の家族の協働力」の5つに分類・定義し、これらの地域力と出生率の要因との関係性を踏まえた対策の方向性を示唆しています。
一例を挙げると、未婚化を克服する結婚要因には「地域の働く力」と「地域の移住・定住 力」が関係していることが分かりました。夫婦の出生力要因については、第 1 子の場合、「地域のにぎわい力」や「地域の子 育て基盤力」との関係、 第 2 子要因では「地域のにぎわい力」「地域の子育て基盤力」「地域の家族 の協働力」との関係、第 3 子要因では「地域の家族の協働力」との関係が大きいことが明らかになりました。
このように各市町村における地域力の特性が分かれば、少子化対策として何がより有効に作用するかの手掛かりが得られ、少子化対策に向けた効果的な“処方箋”を描くことができるかもしれません。