閉鎖する保育所が増加傾向に!
- 吉田正幸
- 7月13日
- 読了時間: 3分
今後も続く保育運営事業者の倒産や休廃業、解散
企業信用調査の最大手である帝国データバンクはこのほど、今年上半期(1~6月)に発生した保育園運営事業者の倒産や休廃業、解散件数が22件に上ることを発表しました。これは、前年同期の13件を大幅に超えており、同社は「通年で過去最多を更新する可能性がある」ほか、「保育施設の余剰感や園児獲得競争が厳しさを増しており、今後も淘汰が続くと予想される」とみています。
保育所等の倒産件数が増加している背景には、少子化の加速による乳幼児人口の減少や待機児童のピークアウトなどが大きく影響していることは確かですが、加えて保育人材難が依然として続いていることも、保育事業の継続を困難にしていると考えられます。さらに、多くの保育施設を運営している保育事業者の中には、厳しさを増す保育業界の将来性に見切りをつけて、高齢者施設のほうに事業の比重を移しているケースも少なくないと見られています。
同社の発表によると、2025 年上半期に発生した「保育園」運営事業者の倒産(負債1000 万円以上、法的整理)や休廃業、解散による閉鎖は計22件に上ることが判明しました。前年同期(13 件)より7 割増となっており、上期に限って言えば3年連続の増加となっています。これまで通年で最も多かったのは2024 年の31 件ですが、この年の上半期は13件でしたから、今年は通年でも過去最多を更新する可能性があります。
また、2023 年度の保育園運営事業者の損益動向をみると、前年度から「減益」が25.2%、「赤字」が29.1%となっており、赤字と減益を合わせた「業績悪化」の割合は過半数を占めています。一方で、「増益」となった事業者も4割を超えていますが、これについて同社では次のように分析しています。
◇保育施設運営への参入から日が浅い事業者や、内部留保が薄いなど経営体力が乏しい事業者では、入園者の減少や保育士の離職など、予期せぬ経営環境の変化から当初の計画通りの収益が確保できず、水面下で収益力が低下しかねないリスクを抱えている。
◇慢性的な人材不足によって適切な人員配置が困難となり、受け入れ定員数を制限せざるを得ない事業者や、保育士の離職を防ぐために給与水準の引き上げを実施し、運営コストが増大したことで利益が圧迫される事業者が目立った。
こうした状況を踏まえて、今後の見通しについて同社は、「これまで社会問題化していた待機児童問題は一部地域で解消しつつあるなか、保育施設の余剰感や園児獲得競争はより厳しさを増すとみられ、立地面やサービス内容で差別化が図れない運営事業者の淘汰は、今後も続くとみられる」と捉えています。